塗装に関する資格や許可書
塗装業は資格が無くても営業できてしまうため、残念ながらトラブルが後を絶たちません。数多くある塗装業者からどうやって業者を選んだらいいか、悩まれている方も多くいらっしゃると思います。
信頼できる業者かを判断する際に、資格や許可証を保有しているかどうかが、重要な判断基準の一つとなります。このページでは、塗装に関する資格や許可書について紹介します。
塗装業の資格は信頼の目安
資格の中には、国家資格と民間資格があり、塗装業を行う上で取得しておくべき資格は数多くあります。
実は、塗装業は開業するのに特別な資格や許可は必要ありません。そのため、知識や技術がなくても「塗装業者です」と業者が名乗ってしまえば、営業することができてしまいます。
必ずしも資格や許可がないから知識や技術力がないというわけではありませんが、トラブルが多い塗装業界で、資格や許可を取得しているかどうかは、信頼できる業者か判断する目安になります。
一級塗装技能士と塗装工事許可証が重要
資格の中でも、一定年数の実務経験や指定される様々な条件や審査をクリア業者のみが得られる、一級塗装技能士と塗装工事許可証がある業者は信頼度が高いという目安になります。
一級塗装技能士とは、厚生労働省が認定する国家資格で、職人実績が7年以上もしくは二級塗装技能士になってから5年経つことで受講資格が与えられます。合格率は50%前後で、塗装について知識や技術を持っている職人と証明する資格です。
資格ではありませんが、塗装工事許可証という会社に与えられる許可証もあります。こちらは、工事実績が一定以上かつ不正がない業者だけに与えられるものです。
一級塗装技能士が施工や管理することが重要
施工する職人全てが、一級塗装技能士の資格を持っている業者が理想的です。しかし、職人実績が7年以上もしくは二級塗装技能士になってから5年経たなければ試験を受けることができないので、全ての職人が一級塗装技能士の資格を持っている業者はほぼありません。
そのため、誰が一級塗装技能士の資格を持っているかが重要なポイントです。受講しても半数が落ちる試験なので、腕のいいベテランの職人でもこの資格をもっていない職人はたくさんいます。
社長自らが一級塗装技能士の資格を持っている業者であれば、職人を採用する際に腕の良い職人かを見抜くことができるので安心です。
社長が一級塗装技能士の資格を持たず、塗装の知識もないような業者では、下請け業者に施工を依頼します。このような業者では、依頼する下請け業者の力量が分からないまま丸投げせざる負えなくなるという問題があります。
このような業者へ依頼しないためにも、社長や現場の管理者が一級塗装技能士の資格をもった業者を選ぶことをオススメします。
塗装業の許可書・国家資格一覧
塗装工事業許可
建設業の許可は建設工事の種類ごとに29種類に分類されています。その中の1つに含まれるのが塗装工事業許可です。戸建て住宅ではあまり関係はありませんが、税込500万円以上の工事を行う場合には、許可が必要です。
下記の条件を満たした業者のみ許可を得ることができます。
・事業主もしくは役員として5年以上経営業務の経験がある管理責任者が在籍していること。
・10年以上の職人実績など一定の経験や資格がある専任技術者が在籍していること。
・自己資金が500万円ある、もしくは500万円以上の資金調達能力があること。
・不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかではないこと。
認定機関:都道府県知事
都道府県をまたいで支店の事務所を登記する場合には、国土交通大臣が認定します。
参照データ:国土交通省
一級塗装技能士
職人実績が7年以上もしくは二級塗装技能士になってから5年経つことで受講資格が与えられます。また、学歴や職業訓練受講歴などによっては、受講資格に必要な実務経験は短縮されます。
合格率は50%前後で、塗装について知識や技術を持っている職人と証明する資格です。
認定機関:厚生労働大臣
二級塗装技能士
職人実績が2年以上もしくは三級塗装技能士の資格を取得することで、受講資格が与えられます。一級塗装技能士と同じく、学歴や職業訓練受講歴などによって、受講資格に必要な実務経験は短縮されます。
認定:厚生労働大臣
職業訓練指導員
職人実績が15年以上もしくは一級塗装技能士の資格を取得することで、受講資格が与えられます。一級塗装技能士よりもさらに上位の資格で、48時間の講習を受け試験に合格することで、免許を取得することができます。
認定機関:各都道府県知事
有機溶剤作業主任者
労働安全衛生法で定められている国家資格で、満18歳以上であれば誰でも受講することができます。シンナーやラッカーなどの有機溶剤を取り扱う場面で、有機溶剤作業主任者は危険が及ばないよう、現場の指揮・監督を行います。
認定機関:厚生労働省
特定化学物作業主任
満18歳以上であれば誰でも受講することができます。2日間の講習を受けて筆記試験に合格することで取得することができます。特定化学物質を取り扱う場面で、特定化学物作業主任は危険が及ばないよう、現場の指揮・監督を行います。
認定機関:厚生労働省
高所作業車運転者
高所作業車を運転する場合に必要な、労働安全衛生法で定められている国家資格です。現場以外の公道を走行する場合には、高所作業車の大きさによって「中型自動車」「大型自動車」の運転免許証が必要です。
認定機関:厚生労働省
一級施工管理技士
15年の実務経験もしくは二級工管理技士になってから5年経つことで受講資格が与えられます。また、学歴や職業訓練受講歴などによっては、受講資格に必要な実務経験は短縮されます。
一級施工管理技士は、建設業法で配置が義務付けられている主任技術者や大規模工事で配置が必要な建設工監理技術者として施工計画や、現場の管理・監督を行います。
認定機関:国土交通省
二級施工管理技士
8年の実務経験もしくは職業能力開発促進法による技能検定に合格することで受講資格が与えられます。また、学歴や職業訓練受講歴などによっては、受講資格に必要な実務経験は短縮されます。
二級施工管理技士は、設業法で配置が義務付けられている主任技術者として、現場の管理・監督を行います。
認定機関:国土交通省
乙4種危険物取扱者
消防法で第4類危険物に指定されている引火性液を扱う場合に必要な国家資格です。誰でも受講でき、3つの試験科目全てで60%以上正解することで取得することができます。
認定機関:各都道府県知事
塗装業の民間資格一覧
外壁診断士
3階建て以下の一般住宅を対象に、外壁の劣化診断や安全評価を行い、公正なアドバイスや提案することができる知識や技術を習得したことを証明する資格です。
職人実績が5年以上もしくは1級・2級建築士、木造建築士、1級・2級建築施工管理技士、インテリアコーディネーターの資格を保有していることで受講することができます。
認定機関::一般社団法人全国住宅外壁診断士協会
外壁劣化診断士
外壁の劣化診断や問題に対しての対策について、適切な提案を行うことができる知識を習得したことを証明する資格です。
日本国籍のある20歳以上で、建設業または不動産業での実務経験を3年以上もしくは建築士、宅地建物取引主任者の資格を保有していることで受講することができます。受講する場合には、職人実績は必要ありません。
認定機関:一般社団法人住宅保全推進協会
リウォール診断士
日本ペイント株式会社が行っている認定制度で、研修や実習を行い技術を認められることで、自社の塗料であるダイヤモンドコートの認定施工店にのみ発行される資格です。
認定機関:日本ペイント株式会社
窯業サイディング塗替診断士
木造住宅塗装リフォーム協会が行っている検定で、窯業サイディング材についての知識を習得したことを証明する資格です。
実務経験5年以上もしくは建築士、施工管理技士、技能士、窯業サイディング塗替診断士のいずれかに該当することで受講することができます。
認定機関:木造住宅塗装リフォーム協会
職長・安全衛生責任者教育
新たに職務に就く職長や作業を直接指揮・監督するには、安全又は衛生のための教育を受講することが、労働安全衛生法第60条で義務付けられています。基本的には誰でも受講できますが、講習を実施している団体によっては実務経験や年齢に制限を設けている場合があります。
認定機関:都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関
足場の組立て等作業主任者
つり足場や張出し足場、高さが5m以上の足場の組み立てや解体などを行う場合、足場の組立て等作業主任者の指揮のもと作業を行わなければならないと安全衛生法第14条で定められています。
満21歳以上で足場作業での実務経験が3年もしくは満20歳以上で大学、高専、高校、中学において土木、建築又は造船に関する学科を専攻し足場作業での実務経験が2年経つことで受講することができます。
認定機関:都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関
ゴンドラ取扱特別教育
ゴンドラは、ビルなど高い建物で行う塗装や溶接、清掃、組み立て作業などで使われる、つり足場の作業床が昇降装置によって、上下に移動する設備のことです。
厚生労働省が定めたゴンドラ安全規則第12条では、事業者は、ゴンドラの操作の業務に労働者をつかせるときは、当該労働者に対し、当該業務に関する安全のための特別の教育を行なわなければならないと定められています。
認定機関:都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関
自由研削といし特別教育
電気サンダーなどの砥石部分の取替えや、取替え時の試運転を行う場合には、特別教育を修了することが労働安全衛生規則で義務付けられています。
認定機関:都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関
石綿作業主任者
石綿(アスベスト)が使用されている建物の解体などに関わる業務を安全に行うために、石綿作業主任者が現場の管理・監督を行わなければならないと労働安全衛生法第14条、石綿障害予防規則第19、20条に定められています。
認定機関:都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関
マスチック仕上士、マスチック仕上性能管理
全国マスチック事業協同組合連合会の組合員に対して与えられる資格で、特許取得のマスチック塗材ローラ工法の技能研修を受けることで技能者として認められます。
認定機関:全国マスチック事業協同組合連合会
カラーコーディネーター2級
色が持つ特性や効果に関する知識を持っていることを証明する資格です。塗装業の場合には、外壁や屋根、付帯部分などの配色を、より専門的な観点からアドバイスや提案することができる資格となります。
認定機関:東京商工会議所
雨漏り診断士
雨漏りに関する診断や問題に対しての対策について、適切な提案を行うことができる知識を習得したことを証明する資格です。
認定機関:NPO法人雨漏り診断士協会
雨漏り鑑定士
雨漏りの鑑定や雨漏りトラブルを未然に防ぐ知識や技術を習得したことを証明する資格です。
認定機関:一般社団法人 雨漏り鑑定士協会
まとめ
塗装業は開業するのに特別な資格や許可は必要ないので、知識や技術がなくても「塗装業者です」と業者が名乗ってしまえば、営業することができてしまいます。
必ずしも資格がないから知識や技術力がない業者というわけではありませんが、業者が保有している資格についての内容や難易度を知っていることで、信頼できる業者か判断する目安にすることができます。