ラジカル制御塗料の特徴と単価
塗膜を劣化させるラジカルという物質を制御することで、チョーキングを起こしにくくしたラジカル制御塗料。
水性のラジカル塗料は、関東以南であれば年中施工してもいいかもしれませんが、宮城県では冬場の施工には向いていないと考えています。もし、宮城県でラジカル制御塗料を検討している方は油性(弱溶剤)タイプをオススメします。
このページでは、ラジカル制御塗料の特徴や価格、宮城県には向いていないと考える理由を説明しています。
目 次
ラジカル制御塗料はどんな塗料なのか?
ラジカルとは、塗料が劣化した際に、チョーキング(塗膜が白い粉状になる)を引き起こす原因になる物質です。
塗料を作る際は、比較的安価な酸化チタンを白色の顔料として使用します。
酸化チタンは、紫外線が当たることで活性酸素を発生させ塗膜を形成します。しかし、更に紫外線にさらされるとラジカルが発生し、塗膜の劣化スピードが早くなります。
ラジカル制御塗料は、文字通り「ラジカルの発生を抑える」ことで塗膜の劣化を抑える塗料です。
ラジカル制御塗料のメリット
メリット1:コスパが良い
一言でいうと、コスパが良いところがメリットです。
安価なアクリルやシリコン樹脂を使用しているものが多いので、塗料の価格はリーズナブルですが、ラジカルの発生を抑える機能で水性シリコン並みの耐久性があります。
メリット2:チョーキング現象が起きにくい
通常の塗料は、塗膜の表面が粉状になって劣化する「チョーキング現象」が発生します。ラジカル制御塗料は、ラジカルの発生を抑制することで、チョーキング現象が起こりづらいメリットがあります。
メリット3:艶の種類が豊富
ラジカル制御塗料は、艶ありから完全なマッド(艶消し)まで対応ができるので、艶調整を自由に選べます。
メリット4:防カビ・防藻性能がある
添加剤の効果により、防カビ・防藻性能も優れており、日光が当たりにくい北面や、風通しの悪い面でも防カビ・防藻効果を発揮します。
メリット5:ほとんどの下地材に塗れる
相性が悪い下地がない為、ほとんの外壁・屋根に塗装が可能です。
ラジカル制御塗料のデメリット
デメリット1:認知度が低い
ラジカル制御塗料は、日本ペイントが2012年に先駆けて発売して、その後の4年間に他メーカーも挙って発売しましたが、一般の方々に対してシリコンやフッ素などのような認知度は低いです。
デメリット2:弱溶剤の商品が少ない
水性がメインの塗料で、弱溶剤の商品が少ないです。
水性塗料は、溶剤よりも初期硬化に時間が掛かるため、塗装後の雨や湿気、急激な温度の低下などの影響を受けやすい特徴があります。そのため、宮城県内では、梅雨時期や冬期には不向きです。
塗料メーカーのほとんどは、関東や関西の大都市をメインに塗料を製造しており、東北地方の特性を理解して製造している会社はほとんどありません。お見積もりが出た際に、水性か溶剤か分かりにくい時は、確認することをおすすめします。
ラジカル制御塗料の施工単価(m2)はいくらくらいか?
施工単価は2,500円~4,500円/m2になります。
ラジカル制御塗料の種類は、アクリル・シリコン・無機ハイブリットなどがあり、単価や耐久性がまちまちなので、一般ユーザーには大変分かりにくい塗料です。
弊社でラジカル制御塗料を選ばれるお客様の割合
アクリル0%、ウレタン0%、シリコン30%、ラジカル制御20%、フッ素20%、無機塗料20%、断熱塗料ガイナ10%です。弊社では、弱溶剤2液のシリコンを一番よく使います。
代表的なラジカル制御塗料
塗り替えをリーズナブルにお考えの方、艶調整も自由に決めたい方、10年~12年くらいの塗り替えサイクルをお考えの方にはおすすめです。
【オススメ!】ラジカル制御塗料「アレスダイナミックTOP(関西ペイント)」:平米単価2,500円~2,900円
高耐久のハルスハイブリット塗料(光安定剤入り)で、メーカー発表の耐久年数は15年、艶有り・7分艶・半艶・3分艶と選ぶことができます。
また、ダイナミック強化剤という添加剤を入れることで、湿度85%でも塗装が可能です。雨天時でも雨養生を施して、塗装面に直接雨が当たらない条件下では塗装をすることができます。
ただし、水性なので、弊社では使う機会はあまりないです。
ファインパーフェクトトップ:2,200円~2,600円
日本ペイントから発売されている「ファインパーフェクトトップ」で、単価は2,200円~2,600円/m2です。
弱溶剤の塗料で、パーフェクトトップのラインナップでは金額と耐久性において一番バランスが良く、艶有り・半艶・3分艶・艶消しから選べます。
キクスイロイヤルシリコン:2,200円~2,500円
菊水化学工業から発売されている「キクスイロイヤルシリコン」単価は2,200円~2,500円/m2です。艶あり・つや消し・半艶・3分艶があります。
トリプルブロック(デンスシリカ処理・ハルスによるラジカルトラップ技術・紫外線吸収して熱に変換する技術)で、紫外線から塗膜を守ります。
さらに、塗膜表面の親水性による防藻性の強化、マイクロレベリング技術による均等化された光沢があります。水性なので、弊社では使いませんが、関東以南であれば是非使ってみたい塗料です。
エスケープレミアムシリコン:2,200円~2,800円
SK化研から発売されている「エスケープレミアムシリコン」。単価は2,200円~2,800円/m2です。
水性の1液シリコンのラジカル制御型塗料で、艶有り・半艶・3分艶から選べます。
カタログでは15年持つように謳っておりますが、あくまでも塗り替えの目安が15年で、「15年の耐久性がある」とは謳っていないところに私は不安を感じます。
宮古島で暴露試験をしておりますので、その結果も見てみたいと思います。
ラジカル制御塗料に関するよくある質問
1.ラジカル制御塗料は、汚れやすいと聞いたのですが本当でしょうか?
間違っています。基本的に汚れやすいと謳っているメーカーさんはおりません。各塗料毎でも汚れに強いと謳っており、綿密なシリコン樹脂の架橋塗膜で汚れを防ぐものや塗膜表面の親水性によって防汚性能を発揮するものなどがあります。
2.本当のところラジカル制御塗料のことをどう思いますか?
紫外線によって塗膜が劣化するメカニズムの常識を覆した塗料で、技術革新により生まれたものです。ただし、樹脂がアクリルやシリコンであるものが多く、フッ素の耐久性を超えるものではありません。
あくまでも、水性シリコンより耐久性が高く、フッ素よりも耐久性が低いという極めて中途半端なところに位置します。
結局のところ、高級な溶剤2液のシリコンの方が耐久性が高いので、斬新な塗料と言うよりは、塗料メーカーのお金儲けのためにシリコンの高級路線というレールを引いただけのことだと捉えざるを得ないと考えています。
まとめ
ラジカル制御塗料は、水性シリコンよりも耐久性が高いですが、高級な溶剤2液のシリコンよりも耐久性が低いです。さらに耐久性が高いフッ素などがあるので、そこまで騒ぐものではないかという印象です。
トヨタ自動車で例えるなら、大衆車の新型が高級車路線の市場に出てきたが、クラウンには到底及ばないし、その上にはレクサスがあって、最高級という称号は与えることはできないという感じでしょうか。
弊社では、アパートやマンションなどの集合住宅や街中のビルなどを除き、通年で水性を使う機会はほとんどありません。また、これまでの経験と失敗をノウハウとして蓄積しており、宮城県にあった塗料や添加剤など、一般の方々が知りえない方法で独自の塗装をしております。