アスファルトシングルをメンテナンス(塗装、カバー、葺き替え)の費用相場
アスファルトシングルは、今から100年以上も前にカナダで考案された屋根材で、洋風のおしゃれなデザインが人気です。
日本ではあまり馴染みのない屋根材ですが、アメリカやカナダでは、屋根材全体の80%以上ものシェアを誇っています。近年では、軽量で施工がしやすいことから日本国内でも徐々に注目を集めています。
しかし、屋根は365日紫外線や雨風にさらされているため、汚れや劣化が発生しやすく定期的なメンテナンスが必要となります。そのため、事前に適切なメンテナンス方法や費用について知っておくと安心です。
このページでは、アスファルトシングルの特徴やメンテナンス方法について説明していきます。
アスファルトシングルについて
アスファルトシングルとは
アスファルトシングルとは、ガラス繊維(グラスファイバー)にアスファルトを染み込ませたシート状の屋根材です。その表面に砂粒状の天然石や着色した人工石を接着させて着色します。
石の色によってさまざまな色に仕上げることができ、見る角度に応じて色の濃淡やグラデーションを楽しむことができます。
良い点
アスファルトシングルには、柔軟性が高く施工がしやすいという特徴があります。他の屋根材と違いハサミやカッターで簡単にカットすその上ることができ、シート状の素材なので曲面などの複雑な形状の屋根屋根にも簡単に施工することができます。
また、柔らかく軽量な素材の為、スレートや瓦などのようなひび割れの心配もなく、建物の負担も少ないというメリットもあります。一般的に多く使われているスレート屋根に比べると、重量はなんと半分まで抑えることができますので、屋根が軽くなることによって耐震性の向上にもつながります。
アスファルトシングルは、専用の接着剤を使って固定するので、他の外壁材のように沢山の釘やビスを使わないことで、防水シートに穴を極力開けずに施工することができます。それによって雨漏りの危険性を抑えることができます。
さらに、金属屋根のようはサビの心配がない、天然石が緩衝材となって防音性が高まるので、雨音が気にならないというメリットもあります。
その他にも、接着された石粒のおかげで、ザラザラとした表面に雪が引っかかり滑り落ちにくくなるため、落雪やそれに伴った事故を防止することもできます。雪止めを設置することが可能なので、勾配が急な屋根や豪雪地帯の屋根でも安心の屋根材と言えます。
悪い点
その一方でアスファルトシングルは、日本国内であまり普及が進んでいないことから、輸入品が多く施工できる業者を探しにくいというデメリットがあります。
アスファルトシングルは、軽い素材のため風に飛ばされやすい傾向があります。アスファルトシングルの圧着作業が不十分だと、風が吹くたびにパタパタとあおられてしまったり破損してしまう恐れがあるので、台風や強風の後には点検をおこなうと安心です。
また、アスファルトシングルは湿気に弱いため、北側に屋根がある場合や湿気がこもりやすい地域ではカビやコケが発生しやすいというデメリットもあります。
カビやコケは高圧洗浄で綺麗にすることはできますが、洗浄後に塗装やカバー工法などのリフォームが必要になる場合もあります。
その他にも、経年劣化によって表面に接着された石粒が剥がれてしまうことがあります。石粒が剥がれることによって見た目が悪くだけではなく、落ちた石粒が樋などに溜まってしまうことがあるのでお手入れが必要になります。
石粒は表面を保護する役割があるので、そのまま長い時間放置してしまうと、耐久性が低下して破れやすくなってしまい、雨漏りの原因にもつながる恐れがあるので注意が必要です。
耐用年数とメンテナンス時期
アスファルトシングルの耐用年数は、20〜30年程度ですが、立地や気候条件などによっては耐久年数が短くなることもあります。
ただ、下地に使われている防水シートや塗膜も劣化するため、10~15年ごとにメンテナンスされることをおすすめします。また、台風などの悪天候の後も、剥がれや破れがないか確認するようにしましょう。
耐用年数が過ぎるまでは、5年ごとに剥がれの点検や補修、15年を目安に棟の交換をすると安心です。
アスファルトシングルの劣化症状
どんな屋根材でも紫外線や雨風などによって劣化していきます。下のような劣化症状が見られる場合には、補修などのメンテナンスを行う必要があります。次に、アスファルトシングルで想定される劣化症状についてご紹介してきます。
劣化症状1:塗膜の剥がれ、膨れ
塗膜の剥がれや膨れは、経年劣化や、蓄熱による熱収縮などが原因で発生します。
塗料本来の保護機能が失われている状態のため、そのまま放置してしまうと、アスファルトシングル自体が劣化してしまう恐れがあります。劣化が進行してしまうと雨漏りにつながる危険があるため、塗り替えをする必要があります。
劣化症状2:変色、退色
変色や退色は、下地を保護している塗料に含まれている樹脂が紫外線などによって劣化することによって発生します。
変色や劣化現象の中でも初期に現れる場合がほとんどなため、急いで補修が必要というわけではありません。ただし、そのまま放置してしまうと防水性が低下し、下地の劣化原因になるので、塗り替えを検討するタイミングではあります。
劣化症状3:チョーキング
チョーキングは、手で外壁を触ると白っぽい粉状のものが付く現象です。チョーキング現象は、紫外線などによって塗膜を保護していた樹脂が段々と分解され、表面にむき出しになった顔料が粉状に劣化することで現れます。
チョーキング現象が軽度な場合は、急いで補修が必要というわけではありませんが、触ると粉が手にベッタリと付いてしまうような状態の場合は、塗膜による「保護」機能は失われていると考えられるため塗り替えが必要です。
劣化症状4:コケや藻、カビの発生
コケや藻、カビは、水分が多く日当たりが悪い箇所や湿気が高い箇所をに発生しやすいです。また、アスファルトシングルは湿気に弱く、経年劣化によって付着したホコリなどの汚れが水分を溜め込むことによってコケや藻、カビが発生しやすくなります。
症状が軽度の場合は、高圧洗浄で綺麗にすることはできますが、状況によっては塗装やカバー工法などのリフォームが必要になる場合があります。塗装を行う際には、防藻性や防カビ性などがある塗料で対策することが大切です。
劣化症状5:アスファルトシングルの剥がれ、浮き
アスファルトシングルは、専用接着剤で固定しているため、接着剤が劣化することで浮いたり剥がれてしまうことがあります。
また、施工時の下地調整や洗浄が不十分で接着が甘くなってしまった場合、強風などによって剥がれてしまったり、浮いてしまうことがあります。
アスファルトシングル自体が剝がれてしまうと、屋根を保護することができなくなり、雨漏りが発生したり、落下した屋根材で事故につながる恐れもあるため、症状を見つけたら早めに対処しましょう。
メンテナンス方法と費用相場
アスファルトシングルに劣化症状が見られる場合には、何らかの補修が必要になります。基本的には、部分補修の他に、「塗装」「カバー工法」「葺き替え」のいずれかの方法でメンテナンスをおこないます。
塗装
塗料には、紫外線や雨風から表面を保護する役割があります。しかし、塗膜も紫外線や雨風などの影響によって劣化するため、変色や退色、チョーキングなど塗膜の劣化症状が見られる場合には、塗り替えが必要になります。
アスファルトシングルは、経年劣化によって弾力性が落ち、破れやすくなってしまうため、ある程度弾力性が残っている間に塗り替えをおこなうのがベストです。
塗装の際は、塗料選びが重要になります。油性塗料を使うとアスファルトの成分が溶けて染み出る危険性があるため、基本的に水性塗料で塗装をおこなう必要があります。コケやカビなどが発生している場合には、防藻性や防カビ性の機能を備えた塗料で塗装をおこないましょう。
また、アスファルトシングルを塗装した後には、「縁切り」という作業をおこなう必要があります。縁切りとは、屋根材が重なり合った部分のにできた塗膜をヘラやカッターを使って切っていく作業です。縁切りをすることで、隙間に雨水が溜まって雨漏りの原因になるのを防ぐことができます。
塗装の費用は、選ぶ塗料のグレードによっても異なりますが、1㎡あたり3,000円~5,700円程度が相場となります。一般的な30坪の戸建てを施工した場合、相場は30〜56万円程度となります。
カバー工法
アスファルトシングルに複数個所にめくれや剥がれがあったり、アスファルトシングル自体は劣化していたとしても、下地に問題がない場合には、カバー工法でリフォームをおこないます。
カバー工法でリフォームすることによって、屋根材が2重になり断熱性や防音性が高まるというメリットがあります。また、葺き替えと違い屋根材を撤去せずに施工するので、撤去費用を抑えることができます。
ただ、瓦屋根などカバー工法ができない屋根材もあり、屋根を2重に重ねることによって、屋根の重量が増えて耐震性が低下してしまうというデメリットもあります。
カバー工法での費用は、新しく被せる屋根材の種類にもよりますが、1㎡あたり7,000円~10,000円程度が相場となります。一般的な30坪の戸建てを施工した場合、50万円〜120万円程度となります。
葺き替え
アスファルトシングル自体の劣化が進み、手で曲げると簡単に割れてしまう、下地まで劣化が進行しているという場合には、葺き替えでリフォームをおこないます。葺き替え工事では、屋根材を全て撤去し、躯体部分の補修をおこなってから、新しい屋根材を取り付けます。
葺き替えでリフォームすることによって、屋根材全てを新しくすることができ、屋根材の下にある下地部分の補修をすることができるというメリットがあります。そのため、雨漏りが発生している場合には、その根本の原因から改善することができます。
また、瓦屋根などの重量がある屋根材からアスファルトシングルに葺き替えることによって、屋根が軽くなるため耐震性を高めることができます。
ただ、大掛かりな工事になるため屋根リフォームの中では、一番費用がかかってしまう、工期が長くなるというデメリットもあります。既存の屋根材にアスベストが含まれている場合には、追加でアスベストの撤去費用が必要となります。
葺き替えでの費用も、新しく被せる屋根材の種類にやアスベストの有無よって異なりますが、1㎡あたり8,000円~12,000円程度が相場となります。一般的な30坪の戸建てを施工した場合、120万円前後となります。
また、既存の屋根材を処分するための処分費が別途8万円~10万円程度必要となります。
まとめ
アスファルトシングルは、日本では馴染みの少ない屋根材ですが、アメリカやカナダでは、高いシェアを誇っており、軽量で施工性が良く、他の屋根材に比べひび割れやサビなどの心配が少ない優れた屋根材です。
また、雪国ならではの悩みである落雪にも対応できるというのは大きなメリットではないでしょうか?
ただ、カビやコケなどは生えやすい、強風の影響を受けやすいなどのデメリットもあるため、長く使い続けるためには、こまめな点検やメンテナンスをおこなうことが大切です。
アスファルトシングルは、日本国内であまり普及していないことから、取り扱いに慣れていない業者も少なくありません。
ペイントスタッフでは、屋根の状況に合わせて塗装で対応できるものには塗装、塗装では難しい場合には張替えやカバー工法などお家の状況に一番適した補修方法をご提案させていただきますので、お気軽にご相談ください。