日本瓦の屋根は塗装が必要なのか?
日本瓦は、和瓦とも呼ばれ耐久性の高さや重厚感ののある伝統的なデザインが魅力的な日本を代表する屋根材です。現在は、スレート屋根が主流になっていますが、古くから日本家屋や寺社仏閣などで親しまれてきました。
日本瓦はメンテナンスフリーとイメージされている方も多いのではないでしょうか?しかし、いくら高耐久な屋根材とは言っても、経年劣化が全くないという訳ではありません。定期的にメンテナンスをおこなうことで、何十年と寿命を持たせることができるようになるのです。
このページでは、日本瓦の特徴や起こりうる劣化症状、メンテナンスでと塗装が必要なのかについて説明しています。
日本瓦について
日本瓦とは、粘土を原料に焼き上げて作る粘土瓦のことで、和瓦とも呼ばれています。
日本国内で生産される瓦のうち、最もシェアを占めているのが、愛知県三河地方の「三州瓦」、兵庫県の淡路島の「淡路瓦」、島根県石見地方の「石州瓦」が日本三大瓦と言われ、その中でも、三河地方の生産シェアは80%以上になっています
日本瓦は、1000度以上の高温で焼き上げて作るので、耐火性に優れ、瓦自体が硬く強度が高いという特徴があります。そのため、耐用年数は50年~100年とも言われ、基本的に再塗装のメンテナンスは必要ありません。
その他にも、粘土で作られて厚みのある日本瓦は、金属屋根に比べて防音性や断熱性に優れているというメリットがあります。
しかし、日本瓦は1枚当たりの重量が2~3Kgと他の屋根材に比べて非常に重く、建物の負荷が大きくなることによって耐震性が低くなってしまいます。さらに、重い日本瓦を支えられるように、家の基礎部分もしっかりと工事しなければならないので建築費も高くなってしまうという特徴もあります。
また、日本瓦葺きの屋根は瓦職人と呼ばれる専門の技術者によって作られています。そのため、他の屋根材に比べ、施工に時間やがかかってしまう傾向があります。
日本瓦には、表面の処理方法によって釉薬瓦、無釉薬瓦、いぶし瓦の大きく分けて3種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
釉薬瓦
釉薬瓦は、粘土瓦の下地を乾燥させた後に、焼き物に使われるガラス質の釉薬といううわぐすりを塗って高温で焼き上げて作れらます。釉薬の種類によってさまざまな色に着色することができ、「陶器瓦」とも呼ばれています。
釉薬によって瓦がコーティングされることによって、水の浸透を防ぐことができるため非常に耐久性に優れ、ほとんど変色もしないので長期的に瓦を美しい状態に保つことができます。そのため、塗装によって表面を保護する必要はありません。
また、瓦の形状にはJ形(和形)、F形(平板)、S形などがあり、好みの形から選ぶことができます。
いぶし瓦
いぶし瓦とは、焼き上がりの最終工程で瓦を密閉し、燻化(くんか)と呼ばれる窯の中で燻す作業を加えることで、独特の輝きをもつ銀色の瓦に仕上がります。
いぶし瓦特有のこの色は、瓦の表面に炭素皮膜ができることで発色します。燻してできる銀色なので、「いぶし銀」と呼ばれています。また、いぶし銀という言葉は人に対して見た目の華やかさはないが実力や魅力があるという意味で使われています。
その例えの通りいぶし瓦は、釉薬瓦のようなツヤはないですが、味わい深く重厚感のある渋い銀色が特徴的な瓦です。
ただ表面の炭素皮膜は、経年とともに剥がれ落ち、段々と変色していきます。炭素皮膜が剥がれることによって、表面の保護機能は低下しますが、瓦自体の耐久性が高いため大きな影響はありません。
また、いぶし瓦専用の塗装が販売されていますが、経年による色ムラはいぶし瓦の魅力の1つでもあるため基本的には塗装の必要はありません。
無釉薬瓦
無釉薬瓦とは、名前の通り釉薬を塗っていない素の状態の瓦のことで、素焼き瓦とも呼ばれています。無釉薬瓦には、原料である粘土に金属酸化物を練り込んで発光させる「練り込み瓦」や、焼き具合のみで色を出す「窯変瓦」があります。
いぶし瓦も釉薬を使っていないという点では、無釉薬瓦の一種と考えることができます。基本的に焼きあがった後に手を加えないため、粘土の色合いが良く出た朱色に仕上がります。この無釉薬瓦は、沖縄の住宅などで良く使われています。
無釉薬瓦も瓦自体の耐久性が高いため、基本的に塗装の必要はありません。ただ、経年によって瓦の表面に藻やコケが発生する可能性があります。
その場合、専用塗料で塗装することもできますが、無釉薬瓦の風合いが塗りつぶすことによって失われてしまうため、汚れを高圧洗浄で除去するという方法がオススメです。
日本瓦の劣化症状
日本瓦は非常に耐久性が高い屋根材ですが、全くメンテナンスが必要ないというわけではありません。下のような劣化症状が見られる場合には、補修などのメンテナンスを行う必要があります。次に、日本瓦で想定される劣化症状についてご紹介していきます。
劣化症状1:瓦の割れ
瓦は、雹や台風などの強風によって飛来物の衝突やアンテナが転倒するなど不慮の事故で割れてしまう場合があります。瓦が割れてしまうと、その隙間から雨水が浸入することによって下地材が劣化し雨漏りが発生してしまう可能性があるので、瓦の割れを見つけたら補修が必要です。
軽度なものであれば、接着パテや防水テープで補修をおこなうことができますが、完全に割れてしまっている場合には交換が必要です。
劣化症状2:瓦のズレ
地震や台風などによる外部からの衝撃によって瓦がズレてしまったり、瓦を固定する役割がある漆喰が割れたり滑落してしまうことがあります。この場合も、そのまま放置してしまうと雨漏りや下地材の劣化につながるため、補修が必要です。
漆喰が剥がれてしまっっている場合には、漆喰の詰め直しをおこなう必要があります。瓦のズレが一部であれば瓦を固定し直し補修をおこないますが、瓦自体が損傷している場合には葺き替えや葺き直しの検討も必要です。
劣化症状3:コケや藻の発生
コケや藻は水分さえあればどこでも繁殖できてしまうため、ひび割れやズレで生じた隙間に雨水などが溜まったことが原因で、コケや藻などが生えることがあります。
コケや藻は、高圧洗浄をすれば綺麗に落とすことができるので、防水性に大きな問題はありませんが、瓦のひび割れやズレはそのまま放置してしまうと、雨漏りなどの心配もありますので、台風が通り過ぎて安全な事を確認したら、屋根の点検をされると安心です。
日本瓦は塗装するのか?
日本瓦はそもそも膜で防水機能を維持しているわけではないので、塗装をする必要はありません。色替えを目的に日本瓦専用の塗料で塗装をすることは可能です。
専用塗料で塗装をすることによって、日焼け跡や変色を綺麗にすることができます。また、防藻・防カビ機能を備えた専用塗料で塗装することで、カビやコケの発生を防止しすることができます。
ただ、塗膜が経年劣化することで塗膜が剥がれてしまうことで、塗装前よりも見栄えが悪くなってしまう可能性もあるため、あまりオススメはできません。
粘土瓦でのメンテナンスを検討されている場合には、主に瓦の補修や交換、漆喰や棟などの補修をメインにおこないます。もしも、屋根全体のメンテナンスをしたい場合には、塗装ではなく葺き直しや葺き替え工事がオススメです。
日本瓦に使用する塗料
日本瓦には塗装の必要はありませんが、以下の専用塗料を使うことで塗装することは可能です。高圧洗浄でしっかりと汚れや藻、カビなどを洗い落としてから、塗装し仕上げます。日本瓦専用塗料のほとんどが下塗りのシーラーやプライマー無しで塗装可能です。
ハイルーフマイルドいぶし:大同塗料
いぶし瓦、陶器瓦専用の屋根用弱溶剤2液型塗料です。シリコン樹脂塗料で、長期にわたって色ツヤを維持し、弱溶剤型なので環境にもやさしく、二液型で乾燥も速いという特徴があります。費用相場は、1㎡あたり2,500円前後です。
新いぶしコート:オリエンタル塗料工業
いぶし瓦、陶器瓦専用の強溶剤2液型塗料です。特殊アクリルシリコン樹脂によって耐候性に優れ、長期にわたって色落ちしないという特徴があります。下地処理剤の「コケトール」と合わせて使用すると、屋根からカビ・コケが発生するのを抑制することができます。費用相場は、1㎡あたり2,500円前後です。
トウキマイルド:オリエンタル塗料工業
陶器瓦と釉薬瓦の塗り替えに特化した屋根用弱溶剤2液塗料です。シリコン樹脂塗料で耐久性に優れ、ほかの弱溶剤塗料に比べて乾燥が早く、2回塗りが可能な塗料となっています。超耐候仕上げのクリヤーをさらに上塗り ( 1回塗り ) することで、耐候性をさらに高められます。
費用相場は、1㎡あたり2,500円前後で、超耐候仕上げの場合は1㎡あたり3,300円前後が相場となります。
まとめ
日本瓦は、瓦自体の耐久性が高いため、基本的には塗装の必要はありません。ただ、自然災害の多い日本では、台風や地震の被害による破損などの心配があります。また、瓦以外の漆喰などは瓦よりも耐用年数が低いため、定期的なメンテナンスが必要となります。
また、瓦の点検で屋根を上る際には細心の注意を払う必要があります。もし、踏んでいない部分に足を乗せてしまうと、瓦を踏み割ってしまう恐れもあるためプロの専門業者に依頼されることをオススメします。
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