外壁・屋根塗装の流れと工程ごとの作業内容
塗装工事は、ただ塗るだけはなく下準備が重要です。
大まかな流れは、隣人への挨拶から始まり、足場仮設→高圧洗浄→下地処理→養生→下塗り→中塗り→上塗り→最終検査→完工となります。
このページでは、各工程ごとにどのような作業をするか?注意点は?などを説明していきます。
目 次
それぞれの作業内容
近隣挨拶回り:工事1週間前~前日
工事前に必ずやっておくべきは近隣の客様への配慮です。お客様から「あそこの家には絶対に行かないで下さい。」といわれない限り、基本的に向こう3軒両隣の計8軒くらいの皆様に工事のご挨拶と工期のお知らせをしながら、粗品をお渡しします。
また、無理にする必要はありませんが、特に仲の良い近隣の方には施主様も直接お声がけしていただくと、より良いです。お客様と近隣の間で以前からトラブルがある場合は、事前に我々に教えていただくと、柔軟に対応できます。
足場設置:工事初日
戸建ての低層足場の場合、宮城県内では100%に近い割合で『くさび緊結式足場』と呼ばれる足場が使用されております。これはハンマー1本で組立てから解体まで施工が可能で、組み換えなど変更が多い場合に有効な足場です。エキスパートな足場職人が組み立てると、家のつくりにもよりますが半日で組み上げることもあります。
大変多くの現場で利用されている足場ですが、欠点は、組み方・解体の際にハンマーで足場を叩く音が必ずします。これはどうしても避けられないことですので、弊社では近隣挨拶時に足場組立・解体の際の騒音のご協力をお願いしております。
作業時間は組立で2人から3人で1日掛かるか掛からないか、解体でおおよそ半日の作業になります。
高圧洗浄:工事2日目
建物を女性のお化粧に例えた場合1番大事になる工程が『洗顔』ではないでしょうか?いくら高級な化粧品を使っても、余分な汚れや油分などが残っていると、化粧のノリも良くないのと同じです。
屋根や壁も十分に汚れやコケ・カビを落としてから塗装の工程に入らないと、剥離や膨れ、剥がれなど不具合を引き起こす原因となります。
洗浄には、高圧洗浄機というエンジン式の機械を追加す。我々プロが使う高圧洗浄機は家庭用の「ケルヒャー」とは威力が全く異なります。
マイカーを洗う際に洗車場に行く方もいらっしゃると思いますが、あの高圧洗浄機の3倍程度の威力で、こびりついた汚れやコケを削るように洗っていきます。
住宅街の塗り替えの際は、箱型の防音型の高圧洗浄機を用いるのがベストです。スクーターのアクセルを3分の一程度回した際の音くらいで、60デシベル程度。これは銀行の窓口周辺とほぼ同じです。
防音がないタイプだと、フルスロットルの音くらいしますので、80~90デシベル程度で、パチンコ店の店内同等の音になるため、少なからず騒音被害が出ることになります。
騒音に関して詳しくは環境省が出した騒音の目安をご覧ください。防音タイプの高圧洗浄機は、ノーマルの洗浄機の倍の金額がしますので、独立仕立ての業者さんや孫請けの業者さんには高嶺の花だったりします。
かく言う弊社も、創業当時は孫請け専門の施工業者でしたので、販売店にお願いしてローンで防音型の洗浄機を買った記憶があります。作業時間は1日程度です。
乾燥(インターバル)
対象物や劣化具合によって様々ですが、弊社では洗浄から最低でも24時間以上あけてから塗装の工程に入るようにしております。
また、屋根でコロニアルといわれるスレート系で、表面の塗膜が剥離して下地が露出して白くなっている場合や、外壁のモルタル、窯業系サイディングなども同様の場合48時間以上乾燥に時間を使う場合もあります。
対象物に水分が残っていると、せっかく塗った塗料が密着せず、剥離や膨れなどの不具合を引き起こす原因となる恐れがありますので注意です。
逆に、鋼製の屋根や壁など水の吸い込みがなければ、次の日から塗装が可能となります。大切なのは時間ではなく本当に乾燥したかどうかなのです。
下地処理
下地処理は、文字通り下地を処理するために行う工程で、下地調整や素地調整とも言われます。
鋼製の屋根であれば錆を削ったり、釘頭にシーリングを充填したり棟板金の繋を塞いだりすることを言います。外壁の場合だと、窯業系サイディングであれば、割れをエポキシのパテで補修したり、繋目をシーリング打ち換えすること、モルタルだとクラック補修なども下地処理と呼びます。
このように下地処理は、塗装をする前に仕上がりや持ちが良くなるために事前に行う工程の総称です。作業時間は現場の状況により異なりますが、2人~3人で1日~3日といったところでしょう。
ちなみに、シーリングをコーキングなどと言ったりもしますが、油性のペースト状のシーリング材を昔コーキングと呼んでいた名残で、シーリングのことまでコーキングと呼ぶ人が多いのです。しかし、油性のペースト状のシーリング材は現在殆ど存在しませんので、シーリングをコーキングと呼ぶことは間違いです。
開口部などの養生作業
開口部養生は一般的に「養生」と呼ばれます。普段聞きなれない言葉かと思いますが、温泉養生といって衛生を守り健康増進に心掛ける意味でも使いますし、建設現場では破損や汚染の防止の作業を養生といいます。
塗装工事においての養生とは、開口部や床など塗装しない部分にビニールで塞いで塗料が付着を防止する作業や、テラスなどの上に足場を組む際に破損しないように板を敷いたりすることを養生いいます。
腕のいい職人は養生作業も美しく、逆につぎはぎだらけの養生はその職人の腕が見えてしまいます。作業時間は現場の大きさにもよりますが通常2人で1日から2日掛かります。
外壁塗装における下塗り作業
さて、ここまでの事前作業が終わったところで、ようやく外壁塗装を開始できます。素人(プロと呼べない職方も含む)の方とプロの違いは、ここまでのプロセスをしっかりと踏んでいるかどうか?です。
また、外壁塗装における下塗りは対象物により使い分けが必要です。例えば、鋼製の壁であれば下塗りは錆止めを使い、窯業系(セメントと木片などが主材)のサイディングであれば下地を止めて隠ぺい力が高い下塗り材を使い、モルタルの下地の場合は、割れやヒビに強くなる下地強化剤を塗布います。
基本的に、一般的な塗料は3回で仕上げるのが原則ですが、下地の吸い込みが多い場合や、1回の下塗りで下地が抑えられない際は、下塗りを2回塗ることもあります。ここで手を抜くと、上塗りの出来栄え、つまり発色や艶持ち・色持ちが悪くなります。ご近所の出来栄えと見比べていただけると、その違いが塗りたての状態でも判ることがあります。
弊社は、下地を隠蔽するためにあえて白い下塗りを採用しておりますので、上塗りを1回塗っただけでは下に白い塗料が見えて、素人目に見ても仕上がっていない状態が分かるようにしております。
作業時間は1日程度です。
外壁塗装における上塗り1回目の作業
下地がしっかりと乾燥して強化された段階でトップ材(上塗り)を塗布していきます。一般住宅の通常の塗装では、吹付は行わず刷毛とローラーの手塗りにて工事を行います。刷毛は隅々などローラーが入らないところで使い、その後にローラーで塗ります。
一人でやっている業者さんだと、ローラーと刷毛を両方もって、ある程度刷毛が進んだところでローラーを使い施工する方もいます。どちらの工法も間違いではありません。ポイントは、刷毛で塗装した部分が乾燥する前にローラーで塗装することです。
1日目に刷毛だけ進んで2日目にローラーだけで塗り重ねると、その部分だけ2回塗りと同じ状態になり、艶にムラが出たりすることがあります。次に同じ色を重ねるからといって、手抜きが出来ない作業になります。
また、手抜きをする業者は上塗り回数をごまかすことがあります。基本的には、各部位1日1工程で進めればいいのですが、1日に2工程から3工程をやりました!!という業者は信用できないので注意してください。
さらに、乾燥時間(インターバル)をしっかりと守ることも重要なポイントです。塗り上がりから2時間以上は空けなければいけませんので、開始時間から逆算して計算がおかしい際は確認をしてください。
外壁塗装における上塗り2回目の作業
上塗り1回目が十分に乾燥した段階で2回目の上塗りに入ります。
遠目から見ると、もうすでに仕上がっているように見えるときもありますが、近づいてじっくり見てみると、まだ仕上がっていないのが分かります。そのため、中塗り終了後にご自分の目で確かめていただくといいかもしれません。
1回目の上塗りと同じものを2回目塗るときって難しいのでは?とか塗り残しになるのでは?と疑問を抱くこともあるかと思いますが、塗料は乾く前と後では色の濃淡が違います。それを、我々は『のぼり』と言っています。
プロであれば、のぼりを見分けられるため、1回目と2回目に同じ塗料を塗っても塗り残しなく塗ることができます。
付帯部の塗装
付帯部とは、外壁塗装の際に外壁以外のことを付帯部と呼びます。雨どいや破風・鼻隠し・軒天・雨戸・面格子等です。付帯部の塗装は、外壁塗装の作業間に行われます。
例えば、外壁の下塗りや上塗り1回目の終了後に乾燥を待つ間に行います。
最終検査
塗装やその他の付帯工事が終わった時点で、職方が自主検査を行います。その後に工事管理者が再度検査を行い、是正箇所を補修する流れになります。
いい職方が入った際は、是正箇所が極めて低いです。私が現場に出ているときは、大手ハウスメーカーの施工班をしておりましたのですが、ほぼゼロに近い是正箇所でした。
はずかしい話ですが、私が現場を離れて数年間は小方に現場を任せることが多くなり、私が自主検査に行くと是正のテープが七夕飾りのようになることも過去にはありました。今考えるとあの頃が一番つらく、何度も辞めたいと考えた時期でもありました。
私にとっても彼らにとってもターニングポイントになったと思います。今やその子方たちが親方として現場を仕上げてくれております。立ち上げ当初は、どこでも親方がいないと成り立たないということが言えるのだと思いますが、それを乗り越えたからこそ本当の力が身についたと自負しております。
足場解体
検査・是正が完了した時点で足場を解体します。この際ハンマーで金属を叩く音がいたします。作業時間は半日程度になります。
完工(引き渡し)
・足場解体後に塗り残しや是正箇所がしっかりと補修されているか?
・足場解体の際に工事中に気が付かなかったゴミが落ちていないか?
・養生ビニールを外した際に出る塗料片などが地面に落ちていないか?
などを確認をして軽微な清掃を行います。
その後、工事中の施工写真を見ながら施工のご説明をし、請求書をお渡しして工事完了となります。
保証書のお渡し
お客様から最終のお支払いを確認した時点で、塗料のスペックに応じた保証書を発行しております。
ご在宅のお客様にはなるべく手渡しをするように心がけておりますが、繁忙期ですとお客様との都合が合わず、お手紙をお付けして郵送にて対応することもございます。
予定より工期が早まる場合、遅れる場合の要因
工期が早まる場合
通常、戸建ての塗り替えの際は2~3名の職方で施工を進めます。大きいお宅は、倍近い人数で施工するときもございます。
よて工期は、晴れの日2週間前後で予定して、天候により遅れることも程度余裕を見て工期を設定しておりますので、職方が想定より多く入ったり、天気が続けば当然早く終わることもございます。
とはいえ乾燥時間(インターバル)がありますので、想定の日数の半分で終わることはあり得ません。
工期が遅れる場合
悪天候が続き、その現場に入る予定だった職人が前の現場から出れないなどの状況だと、工程通りに進まないこともあります。また、予定通りに現場が始まっていても、悪天候によりその分遅れ気味になることがございます。
まとめ
外壁塗装の工事は、近隣の皆様にご協力をいただいて成り立っています。そのため、近隣挨拶(不在時ポスティング)や、可能な限り直接お会いして工事の説明をして、ご迷惑になることとご協力をお願いしてから工事を開始することが大切です。
近隣でお付き合いのある方には施主様も一言声をかけていただくこともプラスアルファーとして大切かと思います。
高圧洗浄では、外壁に付着した藻・菌類を洗い流ししっかりと乾燥させてから次の工程に入ります。
下地処理は、色を付ける前に一通り見ておくことが必要です。
上塗り1.2回目は、下塗りがしっかりと乾燥して塗膜になってから塗布することが大切です。
自主検査・社内検査後に最終是正を行い、施工写真をまとめて工事の説明をして、最終のご請求書をお渡しします。
足場解体の際に出たゴミは、解体後1週間以内、もしくはご入金確認後の保証書をお渡しするタイミングで再度軽清掃して工事完了となります。
ネットに落ちている情報は一つの情報として鵜呑みにせず、しっかりと本質を見極めてから業者を選定なされてください。悲しいかな、この業界には多くの嘘がコロナウイルスのように蔓延しております。
ご自分や家族の大切な資産を守るため、また大金を悪徳業者に支払い無駄に失う前にも自己防衛でしっかりとした知識はもっておいてください。