モニエル瓦の特徴とメンテナンス(塗装、葺き替え)の費用
モニエル瓦とは、オーストラリアのモニエル社と日本の企業が共同開発した商品で、正式名称は「乾式コンクリート瓦」と呼びます。日本国内では1970年代から1980年代にかけて非常に流行した瓦で、その人気から社名である「モニエル」という呼び名が定着しました。
乾式コンクリート瓦には、モニエル瓦の他にもメーカーによって「スカンジア瓦」「クボタ瓦」という商品もありますが、いずれの商品も現在は生産中止となっているため、新築で使われることはなく、入手も困難な状態です。
ただ、全盛期にモニエル瓦を載せた住宅のほとんどが築30~40年を迎えているため、屋根リフォームが必要となるケースが多くあります。そのまま放置してしまうと、劣化が進行して雨漏りに繋がる可能性もあるので、事前に適切なメンテナンス方法や費用について知識を備えておくと安心です。
そのためこのページでは、モニエル瓦の特徴やメンテナンス方法についてご説明していきます。
モニエル瓦について
モニエル瓦とは
モニエル瓦とは、セメントと川砂を混ぜ合わせて作られる「乾式コンクリート瓦」のことで、ヨーロッパ発祥のセメント瓦の一種です。主成分がセメントで作られているため吸水性が高く、表面を塗装で保護する必要があります。
モニエル瓦には、成型後に着色スラリーと呼ばれるセメントの着色剤が1mm以上の厚さで塗装されています。その着色スラリー層の上から、アクリル樹脂系のクリヤー塗料で塗装して仕上げられています。
表面の塗装は、紫外線などによって経年劣化するため、塗り替えを行う必要がありますが、塗り替えには注意しなければいけない点があります。
セメント瓦やスレート屋根(コロニアル屋根)と同じように通常の工程で塗装をしてしまうと、塗膜の膨れや剥離を起こす原因にもなってしまうので、その瓦がセメント瓦なのかモニエル瓦かを見分けて適切に施工する必要があります。
しかし、セメント瓦と見た目が非常に似ているため、中には専門業者でもその違いを理解していない業者も存在します。この2つの見分け方としては、「瓦の小口部分を確認する方法」と「瓦の裏面を確認する」方法があります。
モニエル瓦の場合、小口部分の切り口の表面は凸凹しています。セメント瓦であれば、表面はツルツルとした切り口になっています。
また、モニエル瓦の裏面にはロゴが刻印されているため、瓦を裏返してMのマークがあればモニエル瓦になります。
メリット
モニエル瓦は、着色スラリーやアクリル樹脂系塗料などの特殊な処理がされているため、耐久性や防水性、耐火性に優れているというメリットがあります。断熱性や遮音性にも優れているため、夏場室温が上昇するのを防ぎ、雨音や雑音なども気になりません。
さらに、モニエル瓦には、和型や洋型などさまざまなデザインやカラーバリエーションがあるので、建物の雰囲気に合わせて選ぶことができます。
デメリット
その一方で、モニエル瓦にはメンテナンスに細心の注意を払う必要があります。塗り替えをおこなう場合には、表面に施されているスラリー層を高圧洗浄などで徹底的に除去してから塗装をしなければ、1~2年ほどで塗膜が剥がれてしまう恐れがあります。
また、瓦屋根の中では比較的軽量な屋根材ですが、金属屋根と比べるとその重量はなんと6倍にもなります。そのため、屋根に負担がかかり耐震性が低いというデメリットもあります。
その他にも、現在生産されていない屋根材のため、交換が必要な状況であっても、瓦を入手することが難しいという難点もあります。
耐用年数とメンテナンス時期
モニエル瓦の耐用年数は、20〜30年程度とされていますが、立地や気候条件などによっては耐久年数が短くなることもあります。
表面の塗膜やスラリー層も紫外線や雨風によって劣化するため、10~15年ごとにメンテナンスされることをおすすめします。
ただし、10年経ってもスラリー層の防水機能が機能していてツヤがある場合には、塗装でのメンテナンスはおすすめできないこともあります。そのため、定期的に点検をおこない適切なメンテナンスをおこなう必要があります。
モニエル瓦の劣化症状
どんな屋根材でも紫外線や雨風などによって劣化していきます。下のような劣化症状が見られる場合には、補修などのメンテナンスを行う必要があります。次に、モニエル瓦で想定される劣化症状についてご紹介してきます。
劣化症状1:ひび割れ
ひび割れは、塗膜の防水機能が低下することで、下地が水を吸ってしまい乾燥することで、膨張収縮を繰り返しひび割れが発生します。そのまま放置してしまうと、さらに水を含んで膨張収縮を繰り返し破損や割れにつながってしまいます。
水が防水シートまで達してしまうと雨漏りの原因にもなるため、補修が必要です。軽度な藻のであれば、接着パテや防水テープで補修をおこなうことができますが、完全に割れてしまっている場合には交換が必要です。
しかし、モニエル瓦は入手が困難なため、葺き替えも検討しなければいけません。
劣化症状2:瓦のズレや漆喰の割れ
地震や台風などによる外部からの衝撃によって瓦がズレてしまったり、瓦を固定する役割がある漆喰が割れたり滑落してしまうことがあります。この場合も、そのまま放置してしまうと雨漏りや下地材の劣化につながるため、補修が必要です。
漆喰が剥がれてしまっっている場合には、漆喰の詰め直しをおこなう必要があります。瓦のズレが一部であれば瓦を固定し直し補修をおこないますが、瓦自体が損傷している場合には葺き替えの検討も必要です。
劣化症状3:塗膜の剥離
塗膜の剥がれや膨れは、紫外線や雨風による経年劣化や、蓄熱による熱収縮などが原因で発生します。
塗料本来の保護機能が失われている状態のため、そのまま放置してしまうと、モニエル瓦自体が劣化してしまう恐れがあります。劣化が進行してしまうとひび割れや雨漏りにつながる危険があるため、塗り替えをする必要があります。
塗り替えの際には、スラリー層を高圧洗浄で徹底的に除去してから塗装を行う必要があります。
劣化症状4:チョーキング現象
チョーキングは、手で外壁を触ると白っぽい粉状のものが付く現象です。チョーキング現象は、紫外線などによって塗膜を保護していた樹脂が段々と分解され、表面にむき出しになった顔料が粉状に劣化することで現れます。
チョーキング現象が軽度な場合は、急いで補修が必要というわけではありませんが、触ると粉が手にベッタリと付いてしまうような状態の場合は、塗膜による「保護」機能は失われていると考えられるため塗り替えが必要です。
メンテナンス方法と費用相場
塗装
モニエル瓦の表面の塗装は10年を目安に経年劣化による劣化症状か現れ始めます。そのため、遅くても10〜15年の間には塗装をおこなうようにしましょう。モニエル瓦はほかのセメント瓦とは塗装方法が異なるので注意が必要です。
塗装の際には、まず高圧洗浄やケレンでスラリー層を徹底的に取り除く必要があります。もし、残った着色スラリーにそのまま塗装してしまうと、塗料が密着できずに1~2年ほどで剥がれてきてしまう恐れがあります。
また、施工不良や早期劣化を防ぐために使用する下塗材や上塗り材も、専用の塗料またはモニエル瓦に適した塗料で塗装をおこなう必要があります。工程としては一般的な屋根塗装と同様に「高圧洗浄」→「下地処理」→「下塗り」→「上塗り2回」の3回塗りで塗装をおこないます。
モニエル瓦を着色しているスラリー層はなくなってしまいますが、塗料自体に顔料が含まれているため塗り替えで着色することができるので問題ありません。
施工費用は、使用する塗料のグレードによっても異なりますが、シリコン塗料の場合1㎡あたり2,500円~3,000円程度、フッ素塗料の場合には、1㎡あたり3,800円~4,800円程度が相場となります。
また、漆喰の補修が必要な場合には1㎡あたり2,200~7,000円の施工費が別途必要となります。
葺き替え
瓦が補修できないほど損傷や破損している、下地材まで劣化が進行しているという場合には、葺き替えでリフォームをおこないます。葺き替え工事では、屋根材を全て撤去し、躯体部分の補修をおこなってから、新しい屋根材を取り付けます。
葺き替えでリフォームすることによって、屋根材全てを新しくすることができ、屋根材の下にある下地部分の補修をすることができるというメリットがあります。そのため、雨漏りが発生している場合には、その根本の原因から改善することができます。
また、瓦屋根などの重量がある屋根材からガルバリウム鋼板やアスファルトシングルなどの軽量な屋根材に葺き替えることによって、屋根が軽くなるため耐震性を高めることができます。
また、瓦の破損を部分交換で対応するとしても、モニエル瓦は新たに製造されていないため、現在市場に残っている製品から探し出すことができなければ対応はできませんので、その場合には、葺き替えでリフォームをおこなうしか方法はありません。
施工費用は、どのような外壁材を使用するかによっても異なりますが、1㎡あたり10,300円~21,500円程度が相場となります。
まとめ
モニエル瓦は、現在生産は終了していますが、耐久性や防水性、耐火性、デザイン性などに優れた屋根材です。洋風な風合いや希少性の高さも魅力的なモニエル瓦を長く使い続けるためには定期的に適切なメンテナンスをおこなうことが大切です。
また、劣化の症状によっては塗装では対応できないため、葺き替えを検討する必要があります。ただ、葺き替えとなると大掛かりな工事になるため、今後のライフプランなどをしっかりと踏まえたうえで検討していくことが大切です。
ペイントスタッフは、お家の状況や今後の将来設計などを踏まえて、お客様のご希望に一番適した補修方法をご提案させていただきますので、お困りごとや気になることなどがございましたら、お気軽にご相談ください!
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