光触媒塗料の特徴と単価
光触媒塗料は、光で汚れを分解し、雨で洗い流す「セルフクリーン機能」や、外壁面積150m2に塗装すると乗用車12台が排出するNOxを除去する「空気清浄効果」がある次世代の塗料として期待された塗料です。
しかし、光触媒塗料のリーディングカンパニーTOTOエクセラから発売されていたハイドロテクトコートで不具合があり、今では販売が停止されています。
このページでは、光触媒塗料のメリット・デメリット、オススメの塗料などを説明していきます。
目 次
光触媒塗料はどんな塗料なのか?
光触媒塗料とは、文字通り光触媒反応を起こす塗料です。では、光触媒ってどんな現象でしょうか?
これは、酸化チタンに光を照射すると、そのエネルギーによって水が水素と酸素に分解されるという現象です。
今から遡ること半世紀前、東京大学の当時大学院生の藤嶋昭氏が、本多健一助教授の指導のもと実験中に起こった現象で、1972年のnature誌に発表されました。
発見者の名前を取り『本多・藤嶋効果』と呼ばれるようになった。と言われております。
その後、酸化チタンに光が当たることで活性酸素が発生し、有機物を分解するという効果も発見された。そして、この技術を汚染水や大気の浄化に役立てようと研究は熱心に進められるものの、大量に浄化することは困難であり、なかなか実用化までには至らなかった。
しかしながら、のちに本多研究室に着任した橋本講師が、「汚れを落とすことであれば大量のエネルギーはいらないのではないか?」と黄ばんだ便器を見たときに閃き、ツテを辿って現在のTOTO(株)に共同開発を持ち掛け研究がスタートした。それが、1989年ころの話になります。
さらに研究が進み、お水を入れた容器に酸化チタンを入れ光に当てると、お水が酸素と水素に分解され、酸素が水の分子と反応して超親水膜を作ることがわかりました。これにより、表面とお水がよくなじみ、汚れが付きにくくなるという効果も発見されたのです。
この技術が応用されてTOTO(株)便器のコーティングやの光触媒塗料 ハイドロテクトが世に出てくることになったわけです。
メリット1:光で汚れを分解し、雨で洗い流すからキレイな状態が長持ち
外壁に塗装すると、光触媒反応で壁に付着した汚れが時間をかけて分解し、雨で洗い流すという自浄作用が期待できます。壁自体の撥水膜ではなく、超親水膜にして汚れの中にお水がなじみ、汚れを落とす効果があります。
ここで「超親水膜ってなに?」と思われている方もいるかと思いますので、解説します。よく、車のワックス洗車などの看板や、カーショップのシャンプーコーナーで目にするのが、撥水とか超撥水です。これは親水の真逆、つまりお水が壁を伝わる際の接触角度のことを言っております。
詳しく書くと、超撥水は150度以上を超撥水、強撥水(滑水ともいう)は120度以上、撥水は90度以上、親水は90度以下、超親水は5度以下のことを言います。
メリット2:空気清浄効果が期待できる
外壁に塗装すると、光触媒効果によりNOxを除去してくれるので緑地と同じ空気清浄効果が期待できます。外壁面積150m2に塗装すると、乗用車12台が排出するNOxを除去すると言われています。
デメリット1:艶ありが難しく、マッド系になってしまう
酸化チタン(白い粉)が入っているので、完全な艶ありは難しくマッド系になってしまう。
デメリット2:職人により品質が左右する
職人の技術・管理力によって品質が左右する。例えば、塗り残しの部分はよごれてしまう為、クリアータイプのコーティング材は塗装中に塗継ぎ個所など塗り残しのないようにする対策が必要。
また、厚く塗りすぎると割れる性質があるため、厚すぎず薄すぎず丁度いい膜厚にしなければなりません。
デメリット3:建物の形状によっては使えない
厚く塗りすぎると割れる性質があるため、壁の形状や目地が深さによっては、塗料の溜まりが出るため使えません。
光触媒塗料の施工単価(m2)
3,500円~7,500円です。
弊社で光触媒塗料を選ばれるお客様の割合
アクリル0%、ウレタン0%、シリコン30%、ラジカル制御20%、フッ素20%、無機塗料20%、断熱塗料ガイナ10%です。弊社では、光触媒は使いません。
こんな方にオススメする塗料です
塗装になるべく綺麗な状態を長い間維持したい方におすすめです。断熱や遮熱機能などその他の効果はありませんので『綺麗が続く』というイメージになります。
TOTOのハイドロテクトコートについて
光触媒塗料のリーディングカンパニーであるTOTO(株)、厳密にいうと傘下の(TOTOエクセラ)から販売されていたハイドロテクトコートは、元々講習会を受講した認定施工店しか取り扱いできないものでした。
当初は、弊社も取り扱いはしましたが、塗料があまりにも高額で、お客様の負担が大きいため使用例はそれほどございません。
酸化チタンの光触媒は、無機物以外のものを酸化して分解していく性質があるため、誤って使用したり、塗料に欠陥があると逆に壁自体を犯してしまい不具合の原因になります。使うとなると、大変神経の使う塗料です。
そんな光触媒塗料を、簡易的に扱いやすくする研究が進められ、満を持して市場に送り出されたのがハイドロテクトコートHGになります。
ガラス系のバインダーを下塗りにして保護膜を作り、その上に塗装をしていく従来のタイプとは別に、下塗りの中にその機能を持たせるというものでした。
しかし、全国的に不具合が発生し発売中止、その後生産も販売も完全に中止になりました。今も賠償が続いており耐候性が同等の別メーカーの汎用塗料にてメーカー保証工事にて塗り替えが行われております。
ただし、すべてにおいて不具合が出ているわけではなくメーカー側も理由は分かっていないものとみられます。
いずれにせよ、酸化チタンというものは、すべての塗料に白の顔料として使用されており「ラジカルという反応を起こすものだ」ということは知っておいてください。
オススメの光触媒塗料「インラッシュコート(BAKE)」:平米単価1,500円
ピアレックステクノロジー社に似ているが、安価で銅イオン・銀イオンを添加し人体に悪影響を及ぼさない殺菌と防カビ性能が付加されています。超親水膜になるバインダー剤と酸化チタンを配合している点では、クリアータイプと何ら変わりはない。
■説明動画
代表的な光触媒塗料
ピアレックステクノロジー(コーティング剤):平米単価2,000円
フッ素樹脂ナフィオン等を用いて超親水膜にすることが出来る。それに酸化チタンの光触媒をプラスしたハイブリッド系の光触媒塗料になります。出始めの際は塗布すると白濁したり不具合が出る出ないがあり安定性にやや疑問がありましたが、近年では工場を変えたことで安定した塗料になった。
光触媒塗料に関するよくある質問
1.塗装が難しいと聞いたのですが、本当でしょうか?
その通りです。扱ったことがない職人・会社には塗装させないでください。施工方法などの熟知した会社や職方にお願いしないと不良施工になるリスクが倍増します。
2.不具合が多いと聞いたのですが、本当でしょうか?
間違いではない。先述したように、汎用塗料に比べるとやはり不具合の起こるリスクはあります。樹脂(液体)に酸化チタン(白い粉)を混ぜたものになりますので、塗布量が重要になります。塗布量が多く塗布したり、むやみやたらに塗すると不良施工の原因になります。
3.一度光触媒で塗装すると、次も光触媒を使わないとダメなんですか?
間違っています。確かに光触媒塗料を塗装した上に洗浄して、そのまま普通の塗装をすれば光触媒反応で塗料を犯してしまうために不具合になります。しかしながら、現在では専用のバインダー剤が出ておりますので、そちらを使用することで上塗りも問題なく塗装できるようになりました。
4.最初から光触媒が塗装されている外壁材は塗装ができないと聞いたのですが、本当でしょうか?
間違っています。これは、「3の質問」と同じ理屈になります。工場で塗ったか、現場で塗ったかの違いだけです。光触媒を工場で塗った壁材は通常の壁材よりも高価ですので、ハウスメーカーの営業マンは、にわかな知識で『長持ちします』とか『塗り替えはいりません』とかオーバーに表現されているようです。
汚れを分解することは確かですが、例えばその日付着した鳥の糞などの汚染物質が、明日までに綺麗になっているというような”マジックな塗料”ではありませんので誤解のないように。
光触媒反応には、光に当たることでお水(水分)が酸素と水素に分解され、その中の酸素が空気中の湿気や雨水などと反応して親水性を持たせてくれるため、徐々に汚れを洗い流す効果が出てきます。
塗りたての半年間は汚れやすいというのは、その作用が起きている途中ということになります。また、デモンストレーションであるように汚れを瞬時に洗い流すものの殆どは、もともとの親水性を持つ樹脂に酸化チタンを添加しているもので、光触媒ですぐに汚れが落ちているわけではありません。
まとめ
結びになりますが、光触媒塗料はTOTO(株)様が撤退し少し足踏み状態です。そもそも、外壁に光触媒塗料が必要であるか?という考え方もありますので、ご自分でも慎重に検討なさった方がよろしいかと思います。
現在販売されている光触媒は、紆余曲折を繰り返し、試行錯誤の末に生き残っているメーカーのみになっていますので、不具合の確率は以前に比べ大分安定してきております。艶を求めずに綺麗を長持ちさせたいというお客様にはおすすめの塗料になります。
どのような塗料でご自宅の壁を塗るのか?については、弊社にお問い合わせいただければ、現場の状況状態を見てご提案することが可能ですので、お気軽にご相談ください。