トタン屋根の特徴と塗装料金
トタン屋根は、住宅や倉庫などに使われる金属屋根のひとつです。日本では戦後の高度経済成長期にそれまで使われていた日本瓦に比べて安価で施工期間も短いということから、急速に普及しました。
現在ではさまざまな屋根材が展開されているため、新築の建物では使われることも少なくなってきましたが、雪に強いトタン屋根は今でも北海道や東北などの積雪地域では住宅に採用されています。
このページでは、トタン屋根の特徴やや起こりうる劣化症状、メンテナンス方法について説明していきます。
トタン屋根の特徴
トタン屋根とは、薄い鉄の鋼板に亜鉛をめっき加工したもので、正式には「亜鉛めっき鋼板」と言います。
トタン屋根には、亜鉛めっき鋼板と木材を組み合わせた「瓦棒屋根」や波型に加工された「波トタン屋根」などの種類があります。
メリット
トタン屋根は、継ぎ目が少ないので雨漏りに強く、低勾配の屋根にも対応できるという特徴があります。また、日本瓦に比べると重さは1/100と軽量なため、耐震性が高く積雪にも強いというメリットがあります。
日本瓦だと瓦自体が重いので、その上にさらに雪が積もってしまうと、さらに重量が増え最悪の場合、建物が倒壊してしまう恐れがあります。そのため、北海道や東北などの積雪地域では今でもトタン屋根が広く採用されています。
また、価格が安く施工が簡単なため、コストを抑えながら短期間で施工することができるという特徴があるため、費用を抑えたい倉庫や車庫などにも良く使われています。
デメリット
その一方トタン屋根には、腐食やサビが起こりやすく耐久性が低いという大きなデメリットがあります。表面の亜鉛めっきが剥がれたり傷ついてしまうと、その部分から鉄鋼板が腐食しサビが発生してしまいます。
さらに、一度サビが発生するとそこから一気に腐食が進行するため、最悪の場合トタン屋根に穴が開き雨漏りが発生する可能性もあります。
また、耐熱性が低いため夏場は直射日光によって屋根が高温になってしまいます。そのため、建物構造によっては、室内がとても熱くなってしまうという特徴もあります。
その他にも、トタン屋根は防音性が低いため室内に雨音が響く、スレートや瓦屋根などに比べると安っぽく見えてしまうこともあります。
トタンとガルバリウム、ブリキの違い
トタンやガリバリウム、ブリキはどれも金属屋根に分類される素材です。どの素材もに芯には鉄の鋼板が使用されており、めっきする成分の配合によって耐久性が大きく変わるというのが特徴です。
ただ、ブリキに使われているスズは柔らかい素材で傷がつきやすく、水分に弱いためサビやすいので耐久性の低いブリキは、現在建材として使用されることはほとんどありません。主に、缶の容器やバケツ、おもちゃ、お菓子やパンの型などに使われています。
それぞれのめっきに使われる素材は以下の通りです。
メッキの素材 | 耐用年数 | |
---|---|---|
トタン | 亜鉛 | 8年~10年程度 |
ガリバリウム | 亜鉛+アルミ+シリコン | 30年程度 |
ブリキ | スズ | 建材として使用されることはほとんどありません。 |
トタン屋根の劣化症状
耐久性の低いトタン屋根を長持ちさせるためには、日頃からのこまめなメンテナンスが欠かせません。次のような症状が現れたら、早めにメンテナンスをおこないましょう。
劣化症状1:色あせやチョーキング現象
トタン屋根の表面は塗装で仕上げられているため、紫外線などによって塗料に含まれている樹脂や顔料が劣化することによって色あせやチョーキング現象が発生します。
塗膜が劣化しているということは、トタンを保護する防水機能が低下している状態でもあります。そのまま放置してしまうと、塗膜の剝がれやサビが発生する可能性が高いので、塗り替えを検討しましょう。
劣化症状2:塗膜の剥離や膨れ
塗膜の剥がれや膨れは、紫外線や雨風による経年劣化や、蓄熱や凍害による収縮などが原因で発生します。
この状態では、塗膜が持つ保護機能が失われてしまっているため、屋根の腐食や雨漏りにつながってしまう恐れがあります。症状を見つけたら早急な対応が必要です。
劣化症状3:サビや穴あき
サビにはいくつか種類がありますが、トタン屋根で発生するサビには「白サビ」と「赤サビ」の2種類があります。それぞれトタン屋根にどんな悪影響があるのか詳しくご説明していきます。
メッキ層に使われている亜鉛が酸化することによって現れます。主に潮風が吹く沿岸部や高温多湿な環境で発生しやすく、表面に白い斑点が見えるのが特徴です。また、日当たりが悪く湿気が溜まりやすい軒下や庇の下なども発生しやすい箇所です。
白サビはメッキが劣化し始めているサインなので、塗り替えを検討するようにしましょう。そのまま放置してしまうと、めっき層が徐々に劣化して鋼板がむき出しになってしまうことによって赤サビが発生する恐れがあります。
赤サビは、経年劣化やトタン屋根の表面にできた傷や凹みから内部の鋼板が露出することによって起こる鉄サビのことで、赤茶色のサビが発生します。
赤サビは水に溶けやすく、進行する速度が非常に早いという特徴があるため、一度サビができてしまうと一気に腐食が進んでしまいます。腐食が進行すると金属が脆くなってしまい、穴があいてしまう恐れもあるので、早めにメンテナンスをおこなう必要があります。
劣化症状4:軒板金やトタンの浮きやめくれ
台風などの強風に煽られると軒板金やトタンが浮いたりめくれたりしてしまうことがあります。また、屋根材を固定している釘にも緩みや浮きが発生する可能性があります。
症状をそのまま放置してしまうと、雨水が浸入し建物に重大なダメージを及ぼす恐れもあります。被害が拡大するまえに、早急に補修をおこないましょう。
トタン屋根の塗装工程
は、表面を塗装しなければ雨風などにむき出しになった金属がさらされサビが発生してしまう恐れがあるため、塗装は必須です。塗料の耐用年数や建物の建っている環境にもよりますが7~10年を目安に再塗装を検討するようにしましょう。
塗装工程
トタン屋根の主な塗装工程は、次の通りです。
まずは高圧洗浄機を使い、表面の汚れやコケ・カビなどをしっかりと洗い流します。洗浄が不十分だと塗膜の剥離や膨れなどの不具合を引き起こす原因にもなるため注意しておこなう必要があります。
しっかりと乾燥させたら、トタン屋根にできたサビや腐食、古い塗膜をワイヤーブラシやスクレーパーなどの専用工具を使ってしっかりと取り除きます。この作業は「ケレン」と呼ばれています。このときに、釘の浮きなどの不具合箇所もしっかりと補修します。
また、サビや汚れを落とすだけではなく、トタン屋根では「目荒らし」という作業をおこなう必要があります。目荒らしは、わざと屋根表面をザラザラにさせることで表面積を増やし、塗料の密着力を高めることを目的としています。
下地調整が完了したら、サビ止め入りの2液形エポキシ系の下塗り剤で下塗りをおこないます。下塗りをすることで、下地と塗膜の密着を高めることができます。
下塗りが乾燥したら、中塗りと上塗りをおこないます。トタン屋根は熱伝導率が高いため、塗料選びは建物の建っている環境なども考慮しながら選定する必要があります。
屋根は外壁に比べ紫外線の影響を受けやすいので、塗膜の劣化が早いという特徴があります。そのため、耐久性を考慮すると2型のシリコン塗料以上のグレードから選ばれることをオススメします。
また、熱伝導率が高いトタン屋根には遮熱塗料もオススメです。太陽の熱を反射して室内の温度上昇を防いでくれるため夏の暑さ対策や光熱費削減にもつながります。
ただし、屋根に遮熱塗料を塗ったとしても、外壁の熱を抑える訳ではないので注意が必要です。
トタン屋根の塗装料金
トタン屋根に塗装をおこなう場合には、主に以下のような費用が必要となります。
作業内容 | 費用(1㎡あたり) |
---|---|
足場設置費用 | 約800~1,200円 |
養生費用 | 約300~500円 |
下地処理の費用 | 約400〜500円 |
サビ止め | 約500~800円 |
その他にも、清掃代やゴミ廃棄代、諸経費などの費用も別途必要です。また、塗料にはグレードがあり、グレードによって費用や耐用年数が異なります。それぞれの費用相場は以下の通りです。
グレード | 単価(㎡あたり) | 耐用年数 |
---|---|---|
シリコン塗料 | 2,500円~2,800円 | 8年~10年 |
ラジカル制御型塗料 | 2,500円~4,500円 | 8年~10年 |
フッ素塗料 | 3,500円~4,500円 | 15年~20年 |
光触媒塗料 | 3,500円~7,500円 | 16年~20年 |
無機塗料 | 4,000円~4,500円 | 16年~20年 |
30坪戸建の施工料金の相場
一般的な30坪の戸建てで塗装する場合、250,000円~400,000円程度が相場になります。
カバー工法と葺き替え
トタン屋根のメンテナンスには、塗装や部分補修以外に「カバー工法」や「葺き替え」でリフォームをするという方法もあります。
カバー工法
カバー工法とは、既存の屋根材の上から新しい屋根材を新設するリフォーム方法です。既存の屋根を撤去する必要がないので、リフォーム費用を抑えることができるというメリットがありますが、下地材や防水シートの劣化状況を確認することができないというデメリットもあります。
そのため、既存のトタン屋根がサビていたり、穴が開いてしまっている場合には、下地材まで悪影響を及ぼしている可能性があるためカバー工法でのリフォームはあまりオススメできません。
しかし、既存のトタン屋根の状態が良い場合には、屋根材が2重になることで断熱性や防音性が高まるというメリットもあります。また、新設する屋根材には、トタンよりも3~7倍長持ちするガルバリウム鋼板が採用されるケースがほとんどです。
カバー工法での費用は、新しく被せる屋根材の種類にもよりますが、一般的な30坪の戸建ての場合で、700,000円~1,200,000円程度が相場となります。
葺き替え
葺き替えとは、既存の屋根材を全て撤去してから新しい屋根材に取り替えるリフォーム方法です。
葺き替えでリフォームすることによって、屋根材全てを新しくすることができ、屋根材の下にある下地部分の補修をすることができるというメリットがあります。そのため、雨漏りが発生している場合には、その根本の原因から改善することができます。
しかし、カバー工法と比べるとかなり大掛かりな工事になるため、工期が長くなるというデメリットもあります。また、撤去した屋根材の処分にも費用が必要となるため、費用も他のリフォームに比べ高額になってしまいます。
ただ、トタン屋根の場合は耐久性が低い屋根材です。そのため、垂木や防水シートが劣化してしまっていることが多いので、これを機に耐久性の高いガルバリウム鋼板へ葺き替えをおこなってしまうのもひとつの方法かもしれません。
葺き替えでの費用は、新しく被せる屋根材の種類にもよりますが、一般的な30坪の戸建ての場合で、900,000円~1,600,000円程度が相場となります。
まとめ
トタン屋根は、現在では新築の住宅だ採用されることは少なくなりましたが、継ぎ目が少ないことで雨漏りに強く、軽量で積雪にも強いという特徴から、今でも低勾配の屋根や積雪地域、倉庫などでは採用されることもあります。
ただ、サビやすく耐久性が低いという点から、今では金属屋根の中ではガルバリウム鋼板が採用されることがほとんどです。
トタン屋根にはメリットもありますが、デメリットが多い屋根材なのでご自宅に検討されている場合にはよく検討してから選ばれることをオススメします。
なお、屋根の葺き替えやカバー工法をする場合は依頼する業者を慎重に選ぶようにしましょう。リフォーム業界は残念ながら悪徳業者も多く存在するため、依頼する業者によっては数年で不具合が現れてしまう可能性もあります。
ペイントスタッフでは、屋根の状況に合わせて塗装で対応できるものには塗装、塗装では難しい場合には葺き替えやカバー工法などお家の状況に一番適した補修方法をご提案させていただきます。どんなお困りごとでもお気軽にご相談ください。