ALCパネルの特徴と塗装料金
建物に使用される外壁材にはさまざまな種類があります。その中でも、ALCパネルは耐久性や耐火性が高く、優れた性能を持ち合わせていることから近年人気の外壁材です。戸建住宅だけではなく、マンションや工場などの外壁や床にも使われています。
ただし、ALCパネルは水に弱いという特徴があるため、劣化を防ぐために定期的な塗装をおこなう必要があります。
このページでは、ALCパネルの特徴や劣化症状、塗装料金について説明しています。
ALCパネルの特徴
そもそもALCパネルは、珪石やセメント、生石灰、発泡剤のアルミニウム粉末を主原料としています。名前のALCは「Autoclaved Lightweight Concrete」を略したもので、高温高圧蒸気養生した軽量気泡コンクリートのことを指します。
ALCパネルは、芯材である鉄筋(ラス網)を入れた型枠に原液を流し込み板状に形成したあと、加圧・加熱といった圧力・温度の調整を細かく設定することができるオートクレーブ窯で、高温・高圧・蒸気養生をおこない、表面にさまざまなデザインを加工することで出来上がります。
ALCパネルの種類
ALCパネルの種類は、パネルの厚さによって「薄型パネル」と「厚形パネル」の2種類に分類できます。それぞれの特徴は次の通りです。
厚さ35mm~75mm未満のパネルで、木造や鉄骨の耐久性が低い住宅で使われます。
厚さ75mm以上のパネルで、鉄骨・鉄筋コンクリート造等の耐火建築物などの強固な建物で使われます。 どちらの厚さのパネルにも、外壁の面の部分に使用する平らな形をした「一般パネル」と外壁の角に使用するL字型の「コーナーパネル」があります。 さらに表面加工によって、「平パネル」と「意匠パネル」の2種類に分類することができます。それぞれの特徴は次の通りです。
特にデザイン性を持たせずに表面を平らに加工したパネル
表面に凹凸を用いた模様が施されデザインパネルやタイルを貼ったデザイン性を重視したパネル 一般的な平パネルの場合は幅が300〜600mm、長さは600mm以上であることが多いですが、製品や厚さによってサイズが異なるため、詳しくはメーカーのカタログや業者に確認しましょう。
良い点
発泡剤によってALCパネルの内部に、直径0.05〜0.1ミクロンという非常に細かな気泡が沢山できることで、普通のコンクリートに比べて約1/4程度の重量に抑えることができるというメリットがあります。建物が軽量化されることにより、耐震性を高めることができます。
また、ALCパネルの内部の細かい気泡によって、防音性や断熱性が高いという特徴もあります。気泡に空気の層ができることで、音や熱の伝わりを抑えることができます。ALCパネルの熱伝導率は、一般のコンクリートに比べ10分の1程度と言われています。
さらに、ALCパネルはひび割れや反りの原因である木繊維やパルプ材などの有機物を含まず、補強材として鉄筋(ラス網)が中にあるため、耐用年数が他の外壁に比べて長いというメリットもあります。
定期的にメンテナンスをしていれば、耐用年数は約60年と言われています。
悪い点
ALCパネル内部の気泡があることで、吸水性が高いというデメリットもあります。
内部の気泡部分に水が侵入してしまうと、膨張やひび割れの原因となってしまうため、表面を防水塗装で保護したり、断熱材との間に空気層を作るなど防水性を高める必要があります。
定期的なメンテナンスを怠ってしまい、表面の保護ができていない状態では、水分を吸収してボロボロになってしまう可能性があります。
また、ALCパネルはモルタルやコンクリート外壁などと違い、つなぎ目が多いというデメリットもあります。つなぎ目が多いことによって、目地の部分が目立つ、つなぎ目を埋めるコーキング部分から雨漏りのリスクが高まるため、シーリング材で隙間をしっかりと埋めることが重要です。
その他にも、ALCパネルは他の外壁材に比べて単価が高いという特徴があります。一般的によく使われている窯業系サイディングの単価が4,000~5,000円/㎡程なのに比べ、ALCパネルは5,500〜7,200円程必要となります。
ALCパネルとサイディングの違い
2つの外壁材の大きな違いは、ALCパネルは、珪石やセメント、生石灰、発泡剤のアルミニウム粉末を主原料とする「軽量気泡コンクリート」、窯業系のサイディングはセメント質と繊維質を原料とする「セメント板」という原料の違いがあります。
それぞれを比較した場合のメリットやデメリットは次の通りです。
ALCパネル | サイディング ) | |
---|---|---|
メリット | ・耐火性や断熱性が高い ・耐久性や遮音性が高い ・軽量で耐震性が高い |
・デザインが豊富 ・コストが低い |
デメリット | ・防水性が低い ・コストが高い ・シンプルなデザインが多い ・1枚のサイズが小さく継ぎ目が多い |
・耐久性が低い ・デザインの入れ替えが多く、以前の柄が生産されていない場合がある |
ALCパネルの劣化症状
ALCパネルは、紫外線や雨風などによって劣化していきます。下のような劣化症状が見られる場合には、補修などのメンテナンスを行う必要があります。
劣化症状1:変色や退色
変色や退色は色あせやツヤが低下している状態です。下地を保護している塗料に含まれている樹脂が紫外線などによって劣化することによって発生します。
変色や劣化現象の中でも初期に現れる場合がほとんどなため、急いで補修が必要というわけではありません。ただし、そのまま放置してしまうと防水性が低下し、下地のALCパネルの劣化原因になるので、塗り替えを検討するタイミングではあります。
劣化症状2:チョーキング現象
チョーキングは、手で外壁を触ると白っぽい粉状のものが付く現象です。チョーキング現象は、紫外線などによって塗膜を保護していた樹脂が段々と分解され、表面にむき出しになった顔料が粉状に劣化することで現れます。
チョーキング現象が軽度な場合は、急いで補修が必要というわけではありませんが、外壁を触ると粉が手にベッタリと付いてしまうような状態の場合は、塗膜による「保護」機能は失われていると考えられるため塗り替えが必要です。
劣化症状3:カビやコケ
カビやコケは、水分が多く日当たりが悪い箇所や湿気が高い箇所をに発生しやすいです。また、塗料に含まれる防かび・防藻剤の薬効が無くなってきた場合にも、カビやコケが発生しやすくなります。一般的に塗料に含まれる防かび・防藻剤の薬効は、5~6年が目安と言われています。
カビやコケが発生してしまうと、壁面が水分を吸い込みやすくなり、外壁材や塗膜を劣化させる要因につながるので注意が必要です。塗り替えの際には、高圧洗浄で、しっかり除去する必要があります。
劣化症状4:ひび割れ
ひび割れは、地震や周辺道路の車の動きによって起こる振動を外壁が緩衝できなかった場合に発生することがあります。
髪の毛程の細さのヘアークラック程度であれば、それほど心配する必要はありませんが、ひび割れの幅が0.3mm以上の大きなひび割れの場合は、雨水が浸入してしまう恐れがあるため注意が必要です。
そもそもALCパネルは水分に弱いため、ひび割れが発生したら下地の劣化を防ぐためにも早めに補修をおこないましょう。
劣化症状5:塗膜の膨れや剥離
塗膜の膨れや剥離は、ひび割れからの浸水や内部からの湿気、塗膜や下地の熱伸縮、下地処理や下塗りの不備などが原因で、下地と塗膜が密着不良になることで発生します。
この状態になってしまうと、塗膜の機能は失われてしまっている状態なので、早めに塗り替えをしましょう。塗り替えの際には、内部の湿気や水分を通過させる透湿性の高い塗料がおすすめです。
ただし、症状が発生している箇所をそのままタッチアップ塗装しただけでは、また同じ症状が現れる可能性も十分にあるので、まずは膨れや剥がれの原因を突き止め、原因の改善をすることが重要です。
劣化症状6:シーリング部分の劣化・破断
ALCパネルには、目地と呼ばれるパネル同士の継目があり、そこから雨水が浸入するのを防ぐためにシーリング材が充填されています。
主に紫外線によって樹脂が劣化することによって、肉痩せや剥離、ひび割れといった症状がシーリングに現れます。雨漏りを防ぐためにも定期的に点検をして、症状が現れたら早めに補修をおこないましょう。
7〜8年を目安にシーリングの打ち替えを行うと、ALC外壁を長持ちさせることができます。
劣化症状7:欠損や爆裂
ALCパネルは、外部からの衝撃や熱伸縮が原因で、欠損する場合があります。また、ひび割れから雨水などが浸入し、ALC内部の金属がサビて膨張することで、内側からコンクリートを押し出して破壊してしまう爆裂現象が発生することがあります。
欠損や爆裂が発生してしまった場合には、サビを完全に除去してから錆止めをして、ALC補修材もしくはセメントモルタルなどで埋めて補修をおこないます。また、パネルの状態によっては新しいパネルに張り替える必要があります。
ひび割れなどの劣化症状をそのまま放置してしまうと、このような欠損や爆裂といった症状が現れる恐れもあるので、劣化症状を見つけた場合は早めに対応するようにしましょう。
ALCパネルの塗装料金
ALCパネルの劣化を防ぐためには、定期的な点検を行い、適切なメンテナンスを行うことが重要です。
新築から5〜6年経ったら、目視で点検をおこなうようにしてください。
塗装の費用は選ぶ塗料のグレードによって変わりますが、一般的な30坪程度の住宅で外壁の塗装とシーリングの補修を行う場合、シリコン塗料で90万円前後、フッ素塗料で100万円前後が相場になります。
シーリングの補修方法には、「打ち替え」と「打ち増し」という方法があり、費用の相場は打ち替えが、700~1,200円/㎡、打ち増しが500~900円/㎡程度です。
また、塗料のグレードごとの大まかな単価は次の通りです。
グレード | 単価(㎡あたり) | 耐用年数 |
---|---|---|
シリコン塗料 | 2,500円~2,800円 | 8年~10年 |
ラジカル制御型塗料 | 2,500円~4,500円 | 8年~10年 |
フッ素塗料 | 3,500円~4,500円 | 15年~20年 |
光触媒塗料 | 3,500円~7,500円 | 16年~20年 |
無機塗料 | 4,000円~4,500円 | 16年~20年 |
ALCパネルにオススメの塗料
ALCパネルを塗装する場合には、透湿性の高い塗料を使用するようにしましょう。透湿性の低い塗料で表面を塞いでしまうと、ひび割れなどで内部に浸入した水分の逃げ場がなくなり、塗膜が膨れたり剥がれてしまう恐れがあります。
また、ALCパネル自体は吸水性が高く水に弱いという性質があるため、定期的に塗り替えを行い保護する必要があります。現在シリコン塗料での塗装が主流ではありますが、フッ素塗料などの耐久性が高い塗料を選ぶことで、塗り替えの頻度を抑えることが可能です。
弾性系塗料は不向き?
ALCパネルには、蓄熱性が高いという特徴があり、特に夏場は直射日光の影響を受けて、外壁の表面温度が60℃以上になることもあります。
外壁の内部の湿気が熱せられることによって、水分が水蒸気になりやすくなります。透湿性の低い弾性塗料によって水蒸気が塞がれることで、水蒸気の逃げ場がなくなってしまい、その結果、弾性系塗料の柔らかい塗膜が風船のように膨れてしまう傾向があります。
そのため、弾性系塗料はALCパネルには、不向きな塗料と言えます。
まとめ
ALCパネルには、耐久性が高い、断熱性や耐震性、防音性に優れている、コンクリート外壁に比べ軽量であるなどさまざまなメリットがあります。ただし、ALCパネル自体の吸水性が高いため、防水性が低く表面を塗装で保護する必要があります。
塗膜が劣化し防水性が低下してしまうと、ALCパネル自体がボロボロに劣化してしまう恐れもあるので、長期的に外壁を維持するためにも、定期的に点検をし、必要に応じでメンテナンスをおこなうことがとても重要です。
気になる症状を見つけた場合には、どうぞお気軽にペイントスタッフまでご相談下さい。、国家資格を持つプロが徹底的に建物を調査し、建物の状態やご要望に合わせてご提案させていただきます。