屋上防水の種類や補修費用
マンションやアパート、ビルなどの屋上はほぼ平面となっているため、雨漏りが起きやすい場所となります。そして雨漏りは建物の寿命を縮め、耐震性の低下や腐食などの原因となってしまうので、防水工事を行って雨を浸入させないようにする必要があります。
屋上防水には様々な種類があり、工法によって費用や耐用年数、メリット・デメリットが異なります。また、状況に応じて適している工法も変わってくるため、どのような特徴があるのかを知っておくことが大切です。
このページでは、屋上防水で行われる工法の種類やそれぞれの特徴、屋上防水にみられる劣化症状などについてご説明いたします。
屋上防水とは
屋上防水とは、屋上の床面の雨が染み込んでしまわないように、液体やシートなどで防水層を作る工事のことです。防水層が無い状態で雨が当たると、内部に雨の浸入して雨漏りが発生してしまいます。
雨漏りは建材の腐食やシロアリ、カビの発生、耐震性の低下など建物に様々なダメージを及ぼす非常に厄介な現象です。さらに、マンションやビルの場合は入居者の家財が水濡れするなど、オーナー様と入居者様のトラブルに発展する恐れもあります。
屋上防水は日頃から雨風や紫外線などの影響を受けているため、年月の経過とともに破損や防水機能の低下を引き起こします。そのため、外壁・屋根塗装と同じく、定期的なメンテナンスが重要となります。
メンテナンスの時期は既存の防水層の種類にもよりますが、一般的には10年~15年ごとを目安に行うのが望ましいです。
屋上は普段見ることが少ない部分にはなりますが、建物や入居者の生活を守るためにも防水工事は欠かせませんので、必ず専門業者に定期的な点検と修繕を依頼するようにしましょう。
屋上防水が必要な建物
屋上防水が必要な建物は、まずマンションやビルなどです。
これらの建物は屋根が戸建てのような傾斜のある屋根ではなく平らになっているため、降ってきた雨がその場に溜まりやすい形状となります。そのため、屋上防水を行って雨を弾き、雨が排水口まで流れて行くように施さなければなりません。
また、戸建てやアパートの場合でも、マンションやビルのように傾斜の無い平らな屋根のときは屋上防水が必要です。傾斜のある三角屋根は塗装を行い、傾斜の無い屋上になっている屋根は防水工事を行います。
防水工事の種類
屋上防水の工法は次の4つです。それぞれ費用や耐用年数、特徴が異なります。
ウレタン防水
ウレタン防水とは、液状のウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を形成する工法です。屋上に限らず、ベランダ・バルコニーなど様々な施工場所に用いられています。
メリットは、液状の防水材なので凹凸が多かったり、複雑な形状の場所でも施工が可能という点です。また、継ぎ目の無い防水層に仕上がるため見た目も綺麗で、さらに継ぎ目から雨が浸入するリスクも減らすことができます。
反対にデメリットとしては、職人の技術力が不足しているとウレタン樹脂を塗る際にムラができたり、防水材の乾燥に時間がかかる点が挙げられます。塗りムラなどの施工不良が起きると、仕上がりに凹凸ができて見た目が悪くなったり、雨水が正しく排水できずに雨漏りの原因となってしまいます。
【耐用年数】
ウレタン防水の耐用年数は、8年~10年程です。
【単価】
ウレタン防水の単価は、表面のトップコートのみの場合で㎡あたり2,000円~2,500円程度、防水層を含む場合は㎡あたり4,500円~7,000円程度が相場となります。
FRP防水
FRP防水とは、ポリエステル樹脂とガラス繊維を組み合わせて作られた防水材のことを言い、ウレタン防水と同じく屋上やベランダなど様々な場所で採用されています。
メリットは、軽量でありながらも衝撃に強いという点で、FRP防水を施した屋上は歩行や車の移動も可能となります。また、形状が複雑な施工場所でも継ぎ目のない綺麗な仕上がりになり、耐水性や耐薬品性などにも優れている特徴を持っています。
デメリットは、紫外線の影響を受けやすいため、定期的にトップコートを塗り替えて防水層を保護する必要があることや、伸縮性が無くひび割れしやすいので、下地の劣化状況や建物の構造などの条件によっては施工ができない場合がある点です。
【耐用年数】
FRP防水の耐用年数は、10年~12年程です。
【単価】
FRP防水の単価は、表面のトップコートのみの場合で㎡あたり2,500円~3,000円程度、防水層を含む場合は㎡あたり5,000円~8,000円程度が相場となります。
シート防水
シート防水とは、シート状の防水材を貼り付けて防水層を形成する工法のことです。シートの種類は主に塩ビシートとゴムシートの2種類あり、現在主流の塩ビシートは紫外線や熱に強く、耐久性や耐摩擦性も兼ね備えています。
シート防水のメリットは。大きなシートを使って一度に広範囲を施工できる点で、マンションやビルなどの屋上防水に適しています。また、既に完成されているシートを貼っていくため、ウレタン防水やFRP防水のように塗りムラができる心配がありません。
デメリットは、複雑な形状をしている施工場所には向ていない点です。なぜなら、凹凸が多い場所ではシートを形状に合わせてカットしなければならず、手間と職人の高い技術力が必要になるからです。シートがしっかりと密着していないと、隙間から雨水が入り込んでしまう恐れがあります。
また、シート防水の施工方法には「密着工法」と「機械固定工法」の2種類あり、機械固定工法の場合は施工中に騒音や振動が発生するデメリットもあります。
【耐用年数】
シート防水の耐用年数は、10年~15年程です。
【単価】
シート防水の単価は、防水層を含む場合で㎡あたり4,000円~7,500円程度が相場となります。
アスファルト防水
アスファルト防水とは、防水工事専用のアスファルトや防水シートを使用して防水層を形成する工法です。広い面積を施工するのに向いており、マンションやビル、商業施設などの大型な建物によく採用されています。
メリットは、防水工法としての歴史が長いので実績が豊富にあり、さらに厚みのある仕上がりになるため耐久性・水密性が高く、施工後に雨水が浸入するリスクを減らせる点です。
デメリットは、技術力や経験が浅い職人では施工が難しいことや、施工方法によっては熱でアスファルトを溶かす際に煙や臭いを発することが挙げられます。煙や臭いが気になる場合は熱を使わない方法もあるため、事前に業者と相談することが大切です。
【耐用年数】
アスファルト防水の耐用年数は、15年~20年程です。
【単価】
アスファルト防水の単価は、防水層を含む場合で㎡あたり5,000円~8,000円程度が相場となります。
屋上の劣化症状
屋上防水の劣化症状には、主に次のようなものがあります。劣化を放っておくと雨漏りに繋がるため、適切な対処が必要です。
ひび割れ
屋上防水のひび割れは、主に経年劣化によって発生します。
防水層の表面には、防水層を保護するためのトップコートが塗られており、このトップコートがひび割れしている場合はトップコートの塗り替えを行います。
トップコートのひび割れ自体は大きな問題ではありませんが、トップコートの劣化が進むと防水層を保護する機能が失われていき、防水層の劣化を早める原因となってしまうためメンテナンスは重要です。
トップコートの劣化を放置していると、やがて防水層そのものにひび割れが発生してしまい、亀裂から雨が入り込む恐れがあるので注意しましょう。防水層にひび割れがみられる場合は、防水層を新しく作り直す工事が必要となります。
剥がれ・膨れ
防水層の剥がれの原因は、施工不良または経年劣化です。剥がれが起こる施工不良とは、下地処理や下塗りが不十分だったり、雨の中作業したことなどが考えられ、これらの不備により防水層の密着力が低下して剥がれが発生します。
また、膨れが起こるのは防水層内部に入り込んだ水分が原因です。内部の水分が蒸発し、その湿気が外部に出ようとするときに膨れが発生します。
そして、水分が浸入する理由も、剥がれと同じく施工不良や経年劣化が原因となります。経年劣化によって生じた亀裂から内部に雨が入り込んだり、高圧洗浄後の乾燥が不十分で水分が残った状態だったなどといったことが挙げられます。
その他にも、下地処理や下塗りの不足、防水層を厚く塗りすぎたなどの施工不良も膨れを招く恐れがあり、膨れている部分が破れて剥がれに繋がるケースもあります。
剥がれや膨れの発生は防水機能が失われているサインなので、早めのメンテナンスが必要です。膨れが軽度のときは、脱気筒と呼ばれる内部の水蒸気を外に逃がす部材を設置したり、剥がれや膨れが広範囲に広がっている場合は、改修工事を行って防水層を新たに形成する方法で対処します。
雑草が生えている
屋上に雑草が生えるのは、風で飛ばされてきた植物の種や鳥が運んできた種が育つことが理由です。特に、屋上のガーデニングを行っており肥料や土を扱っている場合は、雑草が繁殖しやすい状況となります。
雑草が多くなると排水の妨げになり、雨が滞留する原因にもなるため、可能であれば日頃から掃除をして雑草が生えないようにお手入れすることが大切です。
注意点として、雑草が生えているからといって、むやみに雑草を抜こうとするのは危険です。雑草の根は防水層を突き破るほどの威力があるので、安易に抜いてしまうと防水層の破断や雨水の浸入に繋がってしまいます。雑草が生えている場合は、まず専門業者に相談するようにしましょう。
水が溜まっている
屋上に水が溜まる原因は、2つあります。1つ目は排水口に異物が詰まっているパターンです。ゴミや落ち葉、泥などの異物が排水口に詰まっている場合は、掃除することできちんと排水できるようになります。
2つ目は勾配の不足です。通常、屋上の床面は排水口に向かって雨が流れて行くように緩やかな傾斜が付いていますが、この傾斜が正しく設計されていないと雨が流れて行かずに滞留してしまいます。
勾配不足の原因は施工不良や建物自体の劣化、地盤沈下などが挙げられ、これらはご自身で解決することはできないので専門業者に依頼する必要があります。
水が溜まっている状態を放置しているとその水分によって防水層が劣化し、結果的に防水層の膨れや剥がれにも繋がってしまうため、雨が降ったあとでも水溜りが残っている場合は早めに対処することが大切です。
雨漏り
屋上で雨漏りが発生するのは、上記でご説明した防水層のひび割れや剥がれ、膨れ、勾配不足などが原因です。
雨漏りはクロスの剥がれや天井のシミなど美観を損なうだけでなく、建材の腐食やシロアリ、カビの発生、家財の水濡れ、耐震性の低下、漏電など建物全体に大きな影響を及ぼし、様々なトラブルに発展する恐れがあるので注意が必要です。
特に、マンションやビルなどの大規模な建物の場合は修繕費用が高額になり、さらに入居者様への対応にも時間を要することになるので、事態の悪化を防ぐ為にも雨漏りを見つけたときは早急に専門業者に調査・修繕をお願いするようにしましょう。
まとめ
屋上防水は、雨漏りを防ぐ為に欠かせない工事です。メンテナンスを怠ると、防水層のひび割れや剥がれなどが発生し、やがて屋上の床から建物内部へ雨水が入り込んでいってしまいます。
防水工事の工法には、ウレタン防水、FRP防水、シート防水、アスファルト防水の4種類あり、それぞれ費用や耐用年数が異なります。施工場所の形状や屋上の用途などを考慮して、最適な工法を選ぶようにしましょう。
屋上は普段見ることが少ない部分かと思いますが、だからこそ10~15年に一度は専門の業者に劣化状況の調査を依頼し、状況が悪化する前にしっかりと修理や改修工事を行うことが大切です。